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カテゴリ「メッシー・ストーリー」の69件の記事 Feed

2020年8月11日 (火)

内定祝いの泥んこ遊び…ストーリー公開

Dm20b_1

 ・・・よく晴れた夏の日、見渡す限り泥が広がっている。絵里子の周りには誰もいない。内定を決めたチャコールグレーのリクルートスーツを着ている。
 勢いよく泥の中にダイブした瞬間、パッと目が覚めた・・・。

 ベットの上でゆっくり上体を起こすと、目の前に昨日クローゼットから出したチャコールグレーのリクルートスーツがハンガーにかかっている。ジャケットの横にタイトスカートがある。スリットのある側がこちらを向いている。お尻部分には深い座り皺があり、スリットも不規則に折れている。
 先週までは、アイロンをかけてピシッとしていたのに、今はしわしわの状態である。しかし、もうアイロンがけもクリーニングも必要ない。昨日、第一志望の企業から内定の知らせをもらったからだ。昨日で絵里子の就職活動は終了した。
 思えば、就職活動に行き詰まり、黒のリクルートスーツを着ておもいっきり泥だらけになって気晴らしをしたあの行為にさかのぼる。あの時以来、気持ちが吹っ切れたことで、就職活動に対して力まないで臨めるようになり自然体で自分の良さを面接でアピールできるようになったのであった。各企業の面接担当者の印象も良かったのであろうか、エントリーした会社の大半の面接において、部長または役員クラスの面接まで到達できるようになった。その中でも一番ご縁があったのが、内定の決まった第一志望の企業と言う事だ。絵里子は昨夜、一人歓喜した。そして、昨夜のうちに、もう着る必要のないリクルートスーツをクローゼットから出してそれを眺めながら深い眠りについたのであった。

 今日、今からまたあの場所に泥んこ遊びに行く予定だ。この前は、気晴らしであったが、今日は自分に対するご褒美、つまりは一人内定祝いだ。

Dm20b_3

 絵里子の住む田舎町は、あちらこちらに田畑が広がっており農業が主たる産業となっている。
 子供の頃、絵里子はじめ子供たちは近くの田畑で泥んこ遊びをするのが常であった。田植え前で代掻きを終えた水田に学校帰りに服のまま飛び込んで泥んこ遊びをしたり、空き地で泥だんごをつくったりしてままごとをして遊んだり、鬼ごっこといいながら泥かけ祭りのように鬼が泥だらけの手で追いかけまわしたりした。小学生の低学年の時から、町一番かわいい女の子と呼び声が高かったこともあり、真っ先に男子たちの餌食になり、白や淡いピンク、またはタータンチェックのスカートなどに手の泥を擦り付けられたりした記憶が蘇ってきた。
 しかし、あの時代の記憶は嫌なものではなく、楽しい思い出として心に刻まれていた。したがって、服を着たまま泥だらけになることに抵抗がないばかりか、いや、むしろ、楽しんで癒しを得ることができるという域に現在では至っている。

 絵里子は、内定を決めた最終面接で着用していたチャコールグレーのリクルートスーツをアイロンがけやクリーニングなどをせず、そのままの状態で昨日までクローゼットにしまってあった。今着ているリクルートスーツは、最終面接後の状態そのままなのだ。

Dm20b_4

 目の前には休耕田の泥田が広がっている。絵里子の周りには誰もいない。
 「(内定祝いに泥んこ遊びしちゃおう!)」
 何のためらいもなく笑顔で田んぼの中に足を踏み入れ、小走りで田んぼの中を走っていきその勢いを増していく。泥ハネがスカートやジャケットにも付くほどである。そして、ある程度走ったところで泥田に勢いよくダイブした。
 「(これって、デジャブ!?)」
 柔らい泥が絵里子の身体を受け止めた。うつ伏せの状態のリクルートスーツは後ろ側には泥ハネが少しついているくらいであったが、泥に接している部分はすごいことになっていることは容易に想像できた。
 しかし、内定を決めたリクルートスーツを泥で汚してしまっている自分の行為に喜びを感じていた。顔のすぐ下にまで迫っている泥の匂いが懐かしい。自然と身体が反応し泥の上に寝転がりながら泥と同化していく。
 その泥の匂いは、幼少期から中学生くらいまでの間、よく泥んこ遊びした時のものと同じであった。あたかも体の各部位の骨までがその匂いに感喜しているかのようであった。

 泥の中で寝転がったり這って進んだりしているとあっという間にリクルートスーツは粘着度の強い泥で覆われていった。
 もっと自由に体を動かして遊びたいと思い、ジャケットを脱ぐと、まだあまり汚れていないブラウスが姿を現した。絵里子はそのブラウスもすでに二度と着る事ができない状態になることは当然覚悟している。泥の中でさっきと同じように寝転がったりして思いっきり泥んこ遊びに興じると、ブラウスも泥だらけになっていき、ジャケットを着ているのか脱いでいるのか分からないほどに泥がべっとり付いている状態になった。

 心行くまで泥んこ遊びを終えると、心地良い疲労感を覚えた。田んぼから畦道に出ると気持ちよさそうに晴れた青空を見上げ深呼吸をした。
 

  

2020年7月24日 (金)

泥まみれの気晴らし…ストーリー公開

Dm20a1

 絵里子は就職活動中で、2着保有しているリクルートスーツを着まわしながら、ほぼ毎日のように面接や説明会などに出席し忙しい毎日を送っていた。
 夏の暑い中、説明会会場などでは時々空調の悪い場所もある。就活生は会場ではリクルートスーツのジャケットを脱がないのがマナーとされているため、こうした状況下では汗ばみ不快な思いをし、余計なストレスが蓄積される。絵里子は、ここ最近の面接の感触が良くなく、悩んでいた。そのこともストレスを増幅させる要因となっていた。

 「(このままでは精神が崩壊する・・・!)」
 と絵里子は感じていた。このまま就職活動を続け、結果が出なければノイローゼになりかねない・・・と自覚症状があるので、まだ精神性を保てている。しかし、このままでは心身のバランスを崩すことは分かっていた。
 気の置けない友達と映画を観に行ったり、遊びに行ったりするのも良いが、たとえ友達同士でも自分の好き勝手に事が進むわけではないので、誰にも気兼ねなく自分だけで行うことができる気晴らしを考えた。

Dm20a2

 面接の帰り道・・・自宅周辺の田畑を眺める。青々とした稲が元気に育っている田んぼもあれば、休耕田、野菜を育てている畑などもあった。
 「(あっ、そうだ!家の近くの田んぼで泥んこ遊びしよう!)」
 絵里子の住む田舎町には辺り一面に田畑があり、子供たちは今でも男女関係なく泥んこ遊びに興じている。絵里子も子供の頃、よく友達と泥んこ遊びをしたことがあった。今では農家も後継者不足に悩んでおり、後継ぎがいないために耕作放棄地となっている田んぼが増えている。その中のいくつかは子供たちの遊び場として開放されており、誰でも自由に泥んこ遊びができる場所が町の中には点在していた。絵里子は、まさにそんな場所で童心に戻った気分で泥んこ遊びをしたい気分になった。身体を包み込む生温かい泥の感触や、泥の中に埋もれて癒された子供時代の事を思い出した・・・。

 ある平日の朝、強い日の光で目覚めた。その日は大学も休みでアルバイトも面接も何もなく終日自由であった。絵里子はこの日とばかりに泥んこ遊びをしにいくことにした。中学時代に卒業記念に学校の制服のまま友達同士で田んぼにとび込んで泥だらけになって遊んだ記憶が蘇ってきた。
 あの時は高校受験に失敗し、しばらくの間、心の傷として残って払拭できずにいた。その喪失感を制服のまま泥んこ遊びをするという行為によって不思議と気持ちが晴れたという経験があるのだ。
 絶対に汚しちゃいけない服のまま後先考えず泥んこ遊びをする方が、絵里子のモヤモヤとした今の気持ちをあの時のように晴らしてくれるのではないかと考えた。
 そして、絵里子はクローゼットの中を覗き込んだ。真っ先に目に入ってきたのは、最近買ったばかりの白のフリル付きロングフレアースカートだった。さすがに気が引けた。その隣には、最近活躍している黒のリクルートスーツとチャコールグレーのリクルートスーツが並んでいた。チャコールグレーのスーツはよれよれになりつつあった黒のリクルートスーツの後継にと購入したばかりでまだ数回しか着ていない。それもまだ泥だらけにするには早すぎる・・・と思った。
 気が付くと絵里子は黒のリクルートスーツを取り出していた。絵里子にとってはこれまでの就職活動がうまくいっていないため、縁起の悪いリクルートスーツともいえた。このスーツを着て泥だらけになって「流れの悪かった過去の就職活動」とスーツもろとも決別したいという願望が一気に胸の奥から湧き上がってきた。
 

Dm20a3

 絵里子は黒のリクルートスーツに着替えると、自由に遊ぶことが可能な近所の休耕田に向かって歩き出していた。田舎町なのでほとんど人とすれ違うことも無い。泥だらけになった後も、両親が仕事から帰ってくる前に帰宅すれば何の問題もないので絵里子は安心してリクルートスーツで泥まみれになることが可能なのだ。

 目的地に着くと懐かしい泥の匂いと、記憶がまざまざと蘇ってきた。そして、パンプスだけは脱いで就職活動で着こなしたリクルートスーツ姿のまま田んぼの中に足を踏み入れた。すぐさま脚をとられて転びそうになるがなんとか転ばないように踏ん張った。これから泥んこ遊びをするのに、汚れないように・・・・と条件反射的にとった自分の矛盾した行動をおかしく思って笑った。

Dm20a4

 次の瞬間だった。
 「えい!」
 と声を上げると泥の上に座り込んでみた。タイトスカート越しにお尻には柔らかく生温かい泥の感触が伝わってきた。水っぽくないので、まだスーツの生地を通して下着まで湿ってきている感覚はなかった。絵里子は自分のリクルートスーツの後ろ部分がどういう状態になっているのかは見えないが、大変なことになっているであろうことは容易に想像できた。
 もう、どうにでもなれと思って、後先考えずに絵里子は泥を手ですくってはスカートやジャケットに塗り手繰っていった。そして、泥の中で寝転んだりうつ伏せになったり、這って進んだりして思う存分泥んこ遊びを楽しんだ。
 立ち上がって先ほどまで何一つ汚れなどなかったリクルートスーツを見下ろすと、スカートとジャケットの境目も分からないほど泥で覆われていた。

 さすがに今の格好のままでは帰宅できないと思ったので、絵里子は、用水路から噴出している水でスーツに着いた泥をできるだけ洗い流した。ジャケットを脱ぐと部分的に泥で汚れている白いブラウスが顔を出した。川から引いている水ということもあり、かなり冷たかったが、この暑さの中、逆にその冷たさが気持ちよく感じた。
 ある程度泥を洗い流したとはいえ、白のブラウスの泥染みはもう落ちないことは分かっていた。また、スーツのスカートとジャケットの生地はかなりのダメージを受けたので、もう着ることができないであろうことを覚悟した。しかし、絵里子はそれでよかった。今までうまくいかなかった就職活動と今着ているリクルートスーツに決別するからだ。

 絵里子は二度と着る事はないであろうリクルートスーツをまじまじとながめた。中学卒業の時に制服のまま泥だらけになったあの時と同じように気が晴れてすっきり感じるのだった・・・・。
 

  

2020年7月10日 (金)

私服で後かたづけ…ストーリー公開

Dm19cst

 絵里子は大学野球部マネージャーとして日々忙しい毎日を送っている。今日は女子マネージャー達との女子会の後、後輩たちへの「ボール拭き指導」で部の浴室の床を泥だらけにして活動を行った。
 雨上がりのグラウンドのようには床に泥を撒いて、ぬかるんだグラウンドに見立てたのであった。女子会で着ていたスーツは泥だらけになり、さらには自分の意思でボロボロにしてしまった。
 気の赴くままに非日常的な行為を楽しんだ後、自分の部室に行きロッカーにしまってあった私服に着替えた。傍らにチャコールグレーのリクルートスーツがあったが、これは部活動の後に面接や会社訪問などがある時のために、自宅とは別に予備で置いてあるスーツだ。
 今はスーツでなく私服に着替える。フロントボタン留めのブルーのやや長めのスカートに、白のパフスリーブのレースブラウス姿だ。フロントボタンはわざとすべて外し、片方の脚があらわになっているのでセクシーである。


 着替え終わり、帰宅しようとしたとき、絵里子は自分が今日の清掃当番になっていることに気が付いた。先ほどスーツのまま泥だらけになった浴室の床を綺麗にしなくてはならない。
 普通はこういう作業は下級生がやるのが一般的とされている世の中の風潮であるが、絵里子の大学では封建的な上下関係は存在しない。平等に当番制となっているので最上級生の絵里子に清掃当番が回ってくることもある。部室はもちろん、今回のような指導で汚れた浴室の床も綺麗に掃除しなくてはならない。

 お気に入りの私服なので、汚さないように慎重に床の掃除を始める。単なる浴槽清掃ならちょっと濡れるだけで済むかもしれないが、今回は油断すると泥ハネがとんだりして大変なことになる。
 最初のうちは中腰でシャワーの水で泥を排水溝の方へと導きながら順調に掃除をしている。中腰の体勢で掃除していると疲れてきたので膝を床に付けながら掃除をしはじめた。
 スカート丈が長いので裾が泥水につきそうだ。しかし、絵里子は掃除に集中していてそのことに気が付いていない。一瞬、前かがみになった時、裾が泥水に浸されるかたちになった。すると泥水でスカートの下部がかなり汚れてしまっていた。絵里子は頭が真っ白になった。身体の力が抜け、まだ泥でべっとりの床の上にお尻を着いて座り込んでしまった。
 立ち上がるとスカートの後ろは泥で茶色に染まっていた。こうなったらもうヤケクソである。先ほどスーツを汚した時と同じように、私服も泥だらけにしてしまおうと思った。ロッカーにリクルートスーツがあることは先ほど確認済なので、今着ている服はもうどうなってもよい気分だった。

 床の上にうつ伏せになったり仰向けになったりしていると、服で床の泥を拭き取る按配となった。まるで人間雑巾だ。
 おしゃれなスカートもブラウスも全身泥だらけになると、意外にも爽快であった。最後は泥を洗い流そうとバスタブに浸かるが、スカートもブラウスも泥染みは落ちそうになかった・・・。

2020年4月26日 (日)

人間ムツゴロウの練習…ストーリー公開

 思い返せば、あの日がすべての始まりであった・・・。

 絵里子は、リクルートスーツ姿のまま卒業論文の研究材料として使う昆虫を求めてこの休耕田で泥だらけになった。 
 今日もまた、何かに強く導かれ、自分の心の奥底から湧き上がる感情を抑えきれずにここにいる。なんと、今日のためにネット通販で新調したチャコールグレーのリクルートスーツを着て、絵里子は例の休耕田の前に立っている・・・。

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 この前、同期の男性社員と一緒にここに来てお客さんの鍵を探しに来た際に、会社の制服のまま泥だらけになった。あれから1ヶ月以上が経つ。色々と驚くことが次から次へと起こっていた。
 なんと、この前ここに一緒に来た同期の男性社員は、あの役員さんのご子息とのことが先輩女子社員から聞かされたのであった。さらには、ある日、その役員さんの部屋に部長の手伝いのために同行して入った際に、なぜか役員さんの机の上に、お客さんのものとされていた「あの鍵」があったのだ。
鍵についていたキーホルダーが「クスの花」をかたどったもので特徴的だったので絵里子ははっきりと覚えていたのであった。
 さらに驚くことに、数日前、今年の「ガタリンピック」に社内の有志たちで参加しようということになったのだが、なんと毎年恒例になっているらしいのだ。しかも、男性も女性も出場する際はスーツ姿でという一風変わった習慣があるらしい。それにも関わらず、出場する女性社員が毎年何人もいるというのだ。そしてこれを企画しているのがあの役員さんということだから驚きだ。休耕田に関しても、「ガタリンピック」に出場する希望者たちがいつでも自由に泥だらけになって練習できるようにと、あの役員さんの強い意向があって会社名義で何年もの間、所有しているとのことである。色々なことがフラッシュバックし、徐々に点と点がつながってきた。

 目の前には泥をたっぷり蓄えた休耕田が絵里子を待っている。
 チャコールグレーのリクルートスーツ姿の絵里子は一人で立っている。スーツ姿で泥だらけになることに喜びをとおり越して快感を感じる域にまで至っている絵里子が、「ガタリンピック」出場のため、練習用に購入したリクルートスーツなのだ。今日を皮切りに今後何度もここで泥だらけになって最終的には泥汚れのシミが幾重にも重なって色濃くなり、生地がヨレヨレになっていく運命にあるスーツ姿の自分を今一度眺める。当然のことながらスカートもジャケットも皺もなく綺麗な状態である。

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 いざ、足を田んぼの中に踏み入れようとすると、ある出来事を思い出した。内定式後の出来事の記憶だ。絵里子は大学時代に培った知識を基盤にしながら点と点を線でつなぎ合わせた。
 「(クスの花・・・といえば、内定式後に会社の廊下で役員さんと会った時、役員さんの後ろポケットから無造作に出ていたハンカチにあしらわれていたよね・・・クスの花って、佐賀県の県花じゃない! 間違いないわ。県木のクスノキの花が県花になっていることをどこかで見たから。あっ、なによ、あの役員さんって、佐賀県出身じゃない!息子が佐賀県出身って言っていたから。なによなによ。これって、あの役員さんが敷いたレールだったんだわ!)」
 絵里子は自分が『トゥルーマン・ショー』という映画の主人公になったような気分だった。

 絵里子は今日のために用意した新品のリクルートスーツのまま、いよいよ田んぼの中に入っていく。泥の感触を確かめながら・・・。
 さすがに、初めのうちは新品のスーツをいきなり汚していくことには抵抗があった。数分後には泥だらけになっていることは自分でも分かっていたが、いっきに泥で汚していくことはためらった。少しずつ・・・と思って膝を田んぼにつけてみる。するとスカートの裾がぬるぬるした泥の上に広がり、少しずつ泥が付着していく。それを見た絵里子は、ふと力が抜け夢の中に誘われる感覚に陥っていった。

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 絵里子は「ガタリンピック」の競技の中で一番出たいと思っている「人間ムツゴロウ」の練習をしようと決めている。本番では、黒のリクルートスーツを着るつもりである。
 それは、就職活動の際に購入したものの、今の会社への内定が思いのほか早く決まったために1回しか着る機会がなくほとんど新品に近い状態でクローゼットに眠っているものだ。今着ているのはあくまでも泥の中をうつ伏せで動く感覚を体得するためだけに購入した練習用のスーツだ。クローゼットの中のリクルートスーツというのは既製品ではなく、某量販店でしっかり体の寸法を測って仕立てたオーダーメイドスーツだ。生地の手触りも良く、絵里子も気に入っていた。難点といえば、毛100パーセントで薄手なので、ちょっと座っただけでもスカートに座りじわができてしまうことだ。現に、1回着た時に、電車で数分移動する際に座席に座っただけでもバックスリットに折り目が入り、お尻の部分に何本も横にしわが入ってしまったのであった。もちろん、今はその皺もクリーニングに出して綺麗に整えられている。
 絵里子は、お気に入りのそのリクルートスーツ姿の自分を「姿見」で確認した時のことを鮮明に覚えていた。自分の心の中で思うだけでも恥ずかしくなってしまうくらい「美しいシルエット」だった。そんなリクルートスーツを皺にしたり汚したりすることはとてもできないと思わせる優美さを自分自身で感じてしまうほどであったのだ。しかし、本番では、そのリクルートスーツを着て泥だらけになると決めている。そのリクルートスーツを着ていることをイメージして「人間ムツゴロウ」の練習に取り組もうとする。新品のスーツを着ているのだから、まさに本番の疑似体験をするにはうってつけだ。絵里子は鼓動が高まるのを感じながら徐々に泥の中に身体をあづけていった。

 しばらく記憶が無くなっていた。絵里子が我に返った時、リクルートスーツは前も後ろも泥でべっとり覆われていた・・・。(完)


【一連のストーリー・バックナンバー】
泥まみれの卒業研究
就活の合間に泥んこ遊び
泥田で体力作り
泥だらけの探索


2020年3月31日 (火)

野球部マネージャーの根性…ストーリー公開

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 大学の野球部マネージャーである絵里子は、就職活動の合間に部の活動の精力的にこなしている。大学4年生として後輩の育成、監督などもしなくてはならないので責任ある立場でもある。
 今日は女子マネージャー達の女子会が催されることになっていた。

 女子会という事で絵里子はじめ参加者達は普段の部活動の際のジャージ姿とはうってかわり、パステルカラーのスーツやかわいい私服姿だ。絵里子は淡いピンク色のタイトスカートスーツ姿だ。
 ここ最近は黒のリクルートスーツを着る機会が多いが、明るくい色の服装で気分も明るくなり、ウキウキ気分で女子会に参加した。

 女子会のあとは、通常通りの活動があるのだが、絵里子はうっかり気が緩んでいたのか、そのことを忘れていた。部室のロッカーに私服一式があることを思い出したが、それはお気に入りのものだったし、部活動で着用するにはデザインが不適切ともいえた。
 そのまま適当な口実を見つけて今日の部活動を休むことも選択肢にはあったはずだが、責任感のある絵里子はスーツ姿のまま部活動をおこうことにした。よりによって今日は後輩へのボール拭き指導の当番日だった・・・。 

 絵里子はしかたなく女子会で着ていたスーツを着たまま後輩へのボール拭き指導が行われる女子マネージャー専用の浴室に向かった。
 ボール拭き指導とは、雨上がりのグラウンドなどで野球部員が練習する際に泥で汚れたボールを短時間ですぐに綺麗にしてボール入れに置いておくということを室内で練習するということである。場所は女子マネ専用の浴室で行うことが習慣化されていた。ちょっと広めの浴室なので、その床に即席で人工的にぬかるみを作って、その泥をボールをたっぷり付けて、泥で汚れたボールを着ている服でふきとるのだ。
 女子マネージャー達は常に手ぬぐいなどを持っているわけではないので、着ている服(大抵はジャージである)で躊躇なくふき取ることができるように日ごろから練習することになっているのだ。
 こうした練習まで律儀に行っているところは世界広しと言えども、絵里子が属す野球部くらいかもしれない。しかし、この練習が伝統的に続いているので、女子マネージャー達は粛々と文句も言わずに実行している。諦念からではなく、彼女たちはどこか泥だらけになることを楽しんでいるというふしがあった。

 絵里子は、指導場所である女子マネージャー専用の浴室にいくと用意されていた人工のぬかるみの上でボール拭きを後輩女子マネージャーの前で実践した。
 泥だらけのボールを、淡いピンク色のスーツで何度も拭きとり綺麗にしていく。最初のうちはスカートで泥をふき取っていたが、スカートは泥だらけにふき取る場所が無くなってきたので、ジャケットや、ブラウスなども使ってボールをふき取る。
 その後、後輩の前で一面泥だらけの床の上にうつ伏せになってみせた。これは、春や夏の大会の後に行われる打ち上げの際に、グラウンドに水を撒いて泥でグチャグチャにして、みんなでヘッドスライディングをする恒例イベントの練習という意味もある。こうしたイベントの練習も本番で抵抗なくできるようにしておくために新入生はじめ低学年の女子たちに教えておくことも4年生の女子マネージャーの大事な役割であった。

 こうした一連の練習を通して、野球部の女子マネージャー達は服のまま泥だらけになることに対して免疫ができるだけでなく、むしろ、楽しむという域にまで達するのであった。
 絵里子も今、後輩の前では指導という名目上、真面目な顔をして泥だらけになっているが、スーツ姿で泥だらけになることが初めてということもあり、ある意味では非日常的な行為を心から楽しんでいた。

2020年3月15日 (日)

面接で特技披露…ストーリー公開

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 絵里子は、大学の野球部マネージャーとして日々忙しい毎日を送っている。4年生となった今は、就職活動や卒業論文の制作などで忙しさに拍車がかかっている。

 今日はどうしても入社したい会社の実技面接の日であった。絵里子は会話形式の面接はすでにパスしていた。絵里子は志望する会社の選考はユニークで、最終面接までたどり着いた志願者はリクルートスーツ姿のまま何らかの「実技面接」を受けることで内定か否かが決まるのであった。
 普通の面接ではないので、実技の実施場所は社内であればどこの場所を指定しても良いという条件があった。つまり、実施する内容によっては、会社のエントランスでも、屋上でも、給湯室でも、階段でもどこでも良いということだ。

 実技なので学問的な得意分野の開陳では意味がない。マジックをしたり、踊りながら歌ってみたり、素早い運動能力を披露したりというように、身体的な動きを伴うことが必須となる。
 例年インパクトのある特技を面接官の前で実施したものは内定が確実になるということを絵里子はOG訪問の際に知らされていた。踊りながら歌ったり、マジックを披露したり、アクロバティックな体操をしたりした者もいたらしいが、だからといって内定をもらったわけではないらしい。

 「(インパクトのあることって、どんなのがあるかな・・・)」
 実技面接当日の朝になっても、絵里子はまだ悩んでいた。
 ふと、OG訪問の際、一昨年この会社に入社した絵里子の先輩である女性から聞いた話を思い出した。
 「この会社で夜勤の人が使うバスルームがあるんだけど、私はね、そのバスタブにお湯をためてリクルートスーツのまま2分間、仰向けの状態で潜水して内定を勝ち取ったわ。2分間息もせずに潜水したことも衝撃を与えたようだけど、リクルートスーツのままやったことが面接官にかなりのインパクトを与えたのかもね・・・。」

 その先輩の話をヒントにして絵里子が思いついたことは、「クリームまみれ遊び」だった。特技とはいいがたかったが、インパクトを与えるという意味では申し分ないように思えた。
 野球部マネジャーである絵里子は、女子マネジャーの正装であるスーツ姿のまま雨に打たれたり、泥濘の中で道具を片付けたりする際にスーツが泥で汚れることが多々あった。そんな時に、絵里子は、スーツのまま思いっきり汚れてみたい・・・・という不思議な願望が生じて、それをいつか実践してみたいと密かに考えていたのであった。
 この願望を実現させるには、今日の実技面接がもってこいの場だと考えたのだ。黒のリクルートスーツを真っ白に汚して面接官をびっくりさせようともくろんだ。帰りはクリームまみれになったスーツを洗い流して、ずぶ濡れ状態のまま帰る覚悟でいた。それで内定を確実にできるのであれば、喜んでやってみたいと思った。

 実技面接までに時間的余裕をもって、途中、スーパーに寄った。そして、大きな生クリームパックを何個が購入した。レジのおばさんが丁寧に梱包している様子を見ていると、絵里子は自然と笑みがこぼれそうになり、それを押し隠すために腕を口元に充てた。
 すると、ドライクリーニング特有の溶剤らしき匂いが鼻を突いた。そのことは、絵里子が着ているリクルートスーツがクリーニングしたばかりであることを物語っていた。

 「(このスーツ・・・、クリームで真っ白に汚れて・・・その後、洗ってびしょびしょになるんだよね・・・。)」
 絵里子は、この後行われる実技面接のことを考えると急に胸が高鳴った。

2020年2月12日 (水)

泥だらけの探索…ストーリー公開

〇現在・会社の休耕田で

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 濃紺のベストにタイトスカートという会社の制服姿の絵里子。某不動産会社に勤務し始めて数ヶ月が経つ。
 開発予定の土地である「あの休
耕田」に見学にきたお客さんが、見学の際に田んぼの中に自転車のカギを落としてしまったらしく、それを探しに絵里子は制服のままスーツ姿の同期の男性と一緒に休耕田の脇に立っている。
 「(ほんと、私って・・・)この田んぼに縁があるんだな~~。」
 「えっ、なに?どうしたの?」
 「(あっ!)何でもないの。いや・・・話すと長くなるから・・・今度ね。」

回想・最終面接
 「あっ、ちょっと・・・青野絵里子さん、あなたのことは色々と聞いておりますよ。弊社の休耕田で何度も泥んこ遊びしたらしいですね。今日はその田んぼを使ってイベントだとか。」
 「はい、田んぼお借りします。ありがとうございます。」
 「今日でリクルートスーツは着る必要はなくなりますから、大学時代の思い出として、そのスーツでイベントに参加してみてはいかがですか?」
 「(えっ・・・?)」
 「いや、冗談ですよ。(笑)スーツのままではさすがにできませんよね。それでは面接ご苦労様でした。」
 「(・・・?)ありがとうございました。」


〇回想・内定式後に会社の廊下で

 「青野さんだよね?あの日もリクルートスーツのまま田んぼに入って泥だらけになるとは大胆でしたね。君のようなガッツある人材がうちには必要でね・・・。」
 最終面接を担当した役員だった。

 「(・・・!!!)あっ、先日は最終面接ありがとうございました。御社で頑張らせていただけることになり光栄です。よろしくお願い致します!会社でも泥だらけになってでも頑張ります!(笑)」
 「(笑)面白いこと言うね。君なら何があってもガッツで乗り切れると信じていますよ。内定おめでとう!」
 役員は微笑みながら絵里子の真新しいリクルートスーツを一瞥すると急ぎ足で絵里子の視界から消えていったのであった。役員の後ろポケットからは、水色のハンカチが無造作に出ていた。何かのマークらしきものが刺繍されていた。
 絵里子は花火の形の刺繍かと思ったが、すぐさま、違うと判断することができた。花火のような線の外側に白い花びららしきものが六枚あるのを確認できたからだ。すると、それは「クスの花」を表しているのだと気が付いた。大学時代、生物学科だった絵里子は動植物には人一倍詳しかった。
 しかし、役員さんが何でクスの花のマークのついたハンカチを持っているのか分からなかった。何かの趣味同好会のシンボルマークなのか、さては会社のロゴマークなのか・・・その程度に考えていた。



〇現在・会社の休耕田で

 会社の夏服制服は紺色のベストにタイトスカートという地味なコーディネイトだ。休耕田の前で男性の同僚と一緒に立っている。
 「まじかよ、まさかこんな田んぼだとは思わなかったよ。こんなところで自転車のカギなんて普通落とさないだろ!それはそうと、課長もちゃんと説明しろよな!だからあいつダメんなだよ。まったく!これじゃ、一度会社に戻って、ジャージに着替えてこないといけないじゃないかよ!」
 先輩社員の前ではおとなしい男子社員は絵里子の前では同期だからということもあるのだろう、屈託なく言葉を選ばずに不満をぶちまけている。その言動が絵里子との心的距離感も感じさせていた。
 「ほんと、そうよね。でも会社に戻って着替えたりしたら時間もったいないじゃない。」
 「それはそうだけど、俺たちこの恰好じゃ・・・」
 「いいの、わたし、制服のまま探すから。あなたはスーツ汚れるの嫌でしょ。そこで待っててくれればいいわ。」
 「青野さん・・・こんな田んぼの中で転んだりでもしたら大変だよ!」
 「そんなことわかってるわ。転ばないように気を付ければいいんだから。大丈夫よ。まってて。」
 絵里子はパンプスを脱ぎ、長袖のブラウスが汚れないように腕まくりをすると会社の制服のままためらいもなく休耕田の中へと入っていった。
 絵里子にとっては、何度もリクルートスーツ姿で泥だらけになった場所なので、服のまま田んぼの中に入ることに対して、これといって違和感はなかった。しかし、同期の男性社員は、不安げに、まるで罰ゲームを受ける同僚女子社員を憐みの表情で見ているかのようであった。

Dm18ast2

 土地の見学にきた人は、長靴を履いてちょっとだけ休耕田の中に入っとのことだ。せいぜい数メートル程度田んぼの中に入って、泥の深さや地盤の質を確認しただけだろう、と、おおよその目安をつけ、絵里子は田んぼの脇から2~3メートル程度のところを隈なく集中的に探し始めた。
 「制服汚れないように注意してね。カギ、ただ落ちただけならいいけど、泥の中に落ちた時にお客さんが足で踏んづけたりでもしていたら奥の方に埋まってしまっているよね。そうだとしたら大変だな。」
 「そうでないことを祈るわ。」
 絵里子は、制服を汚さないように、カギを探索している。さすがに泥の奥底まで手を入れると大変なので、泥の表面部分だけを探していた。しかし、やはりカギは泥の奥底に埋まってしまったのだろうか。お客さんの記憶による情報を頼りに、絵里子は疑わしい場所を念入りに探しているが、なかなか見つからない。

 さすがの絵里子もだんだん苛立ってきた。
 「このままじゃ、帰れないよ。どこにあるんだろう。」
 同僚は返事をするのも億劫らしくだまって絵里子の歩いている方向に向かって田んぼの脇を並行して歩きながら紺の制服を見つめている。
 その時だった。絵里子は長らく歩きづらい田んぼの中で中腰でいたからであろうか、体勢を崩してしりもちをついてしまった。下半身が泥の中に埋まってしまった。同僚にとっては衝撃的な光景であった。

Sn00029

 絵里子は一瞬
 「(やっちゃった!)」
 と思ったが、すぐに懐かしい泥の感触を身体が思い出した。このまま全身泥の中に埋もれたい衝動に駆られた。一人だったら、間違いなくそうするのであるが、今は同僚と一緒だ。しかも、お客さんのカギを探しにきている。カギを探しだして早く会社に戻ってお客さんにカギを渡さなくてはならない。
 今、ここで、自分の欲求を満たすために、同僚の前で田んぼの中でうつぶせになったり仰向けになったりして、制服を泥だらけにして遊ぶことはどう考えても、狂気の沙汰であった。
 しかし、絵里子は泥だらけになる快感を思い出し、泥に埋もれたい欲求を我慢できずにいることも嘘偽りない真実であった。徐々に大胆に制服に泥ハネがとぶように、また、何度も足をとられてしりもちをしたり、泥の奥底に手を入れてブラウスの裾までも汚し始めた。
 これはまだ序章に過ぎなかった。

Dm18ast4

 絵里子には今、二つのミッションが存在していた。それはカギを探しだすことと、同僚の前で自然な形で全身泥まみれになることだった。
 二つ目のミッションは普通に考えれば遂行しがたいものであるが、しりもちでスカートが泥だらけになっていることは、絵里子を勇気づけた。
 「青野さん、だいじょうぶ?俺も、探すよ・・・」
 「いいの。こないで。スーツ汚れたら大変でしょ。私は会社の制服だし、帰りは通勤のスーツが会社にあるから。それで帰れば大丈夫だし。もうこれだけ制服汚れちゃったから、気にせずカギ探せる。(笑)」
 「(笑)それはそうだね・・・。悪いね、青野さんに任せるから!会社に戻ったら総務部の同期のやつに、新しい制服をすぐ青野さんに支給するように俺から頼んでおくから。」
 「総務部に友達いるの?それは心強いわ!」
 すると絵里子は、スイッチが入った。
 カギを探す体勢としては不自然なほどに前かがみになり、お腹や胸を田んぼの中に沈めていく。そして、泥の奥底に手を入れてかき混ぜて、カギが埋まっていないかと探しだそうとする、むろん見つかるはずがない。
 「青野さん・・・何してるの?そんなところでカギ見つかるわけないよ。もっと、こっちの方じゃないの?」

Dm18ast5

 うつ伏せになり匍匐全して同僚が指さした方へと移動する。その様子を見て、彼は、非日常的光景・・・異常ともいえる光景が目の前で繰り広げられていることをただ呆然と眺めているようであった。すくなくても絵里子は彼の表情をそう読み取った。
 否。
 彼は、自分がいつか目の前で観たいと思っていた光景をついに目撃した興奮、歓喜の思いが表情に出ること隠し無表情を装っているのであった。そして、興味本位に絵里子に素朴な質問を投げかけた。
 「青野さんって・・・そういうの好きなの?」
 「そういうのって?」
 「なんていうのかな・・・。泥んこ遊びしたりするの。ネットでなんか、そんなことをしたり、見たりするのが好きな人がいるって書いてあってさ。そういう写真とか動画とかもあって販売もされてたりするんだよね。俺も何度かそういうの見ているとなんか不思議な気分になってきてさ・・・」
 絵里子は彼の言葉をさえぎった。
 「あのね、私は、就活中に、ここで、何度も、リクルートスーツ姿で泥だらけになってしまったの。それも偶然というか・・・、必然というか・・・どうしてなのか自分でもよく分からないの。何かに導かれているような・・・。それで、いつしか、リクルートスーツのような普通は汚しちゃいけないような服のまま泥だらけになることに快感を覚えるようになってしまったの・・・。」
 「青野さん。(笑)・・・」
 「表情をみればわかるわ。こういうの見たかったんでしょ?」
 そういうと絵里子は、さらに大胆に泥んこ遊びをしてみせた。休耕田の中でためらいもなく仰向けになった。制服は前も後ろも泥だらけ。ベストの下の純白のブラウスも泥で茶色に染まっていた。
 「青野さん、カギも探さないと!」
 「ちゃんと探しているわよ!」
 「そろそろ本気で探さないとやばいよ。」
 「見つからなかったら、制服泥だらけになるまでがんばって探したけど見つかりませんでした、と報告すれば納得してくれるかな?(笑)」
 「いや、それは分からないけど。(笑)」
 「でも、見つかりそうな雰囲気ないよ~。」
 「諦める?」
 「もうちょっと、この辺を探してみようか・・・」
 そういうと絵里子は体を泥の中に埋めると両手を広げてカギらしき感触がないか確かめる!

 奇跡というのは、何気ない、ふとした拍子に生じる事が多々あるものだ。
 見つからないと諦めていたカギが、どこからともなく泥の中の絵里子の手の中に現れた・・・。絵里子の根性に対して神様が気まぐれに与えたご褒美ともいえた。絵里子の泥だらけの探索は終わった。

 「見つかったよ~!」
 今日一番の笑顔で彼の方に向かって歩いていった。

2019年11月20日 (水)

泥田で体力作り…ストーリー公開

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 絵里子は某不動産会社への最終面接を間近に控えていたが相変わらず忙しい毎日を過ごしていた。大学の授業にアルバイト、卒業論文の作成準備、夏の大会に向けたソフトボール部の練習など、並みの女子学生では音を上げてしまうほどのハードスケジュールであった。

 そんなある日、絵里子を含む女子ソフトボール部4年生たちは恒例イベントの企画ミーティングに参加していた。そのイベントとは、卒業を控える4年生たちが最後の夏の大会前に、大学キャンパス内にあるグラウンドに大量の水を撒いてぬかるみにし、その中でユニフォーム姿で泥だらけになりながら体力作りをするというものだ。
 ぬかるみの中で裸足で腕立てや腹筋、背筋はもちろんのこと、ランニングやビーチバレーなどを行う。そうすることで足腰も鍛えられ、滑って転ばないようにという意識も働くことから体幹も鍛えられるというわけだ。たとえ転んだとしても、ぬかるみの中なので怪我をすることはない。ユニーフォームが泥だらけになるだけだ。そんなことが女子ソフトボール部4年生の伝統行事になっていた。

 しかし、部長でもある絵里子はある提案をした。
 「みんな、最近私ね、イベントやるのにうってつけの場所みつけちゃったんだ。今年はそこでやろうと思うの。場所はね・・・。(略)・・・実はこんど最終面接をする不動産会社が所有している休耕田なんだけど、そこを使わせてもらう許可をとったの。

 ミーティングが行われている部室内がどよめいた。しかし、それは絵里子の提案に対する否定ではなく、好奇心からであった。
絵里子の提案は満場一致で決まった。

Dm17c1

 絵里子は前回の面接の最中に、ひょんな会話の流れから休耕田の所有者が不動産会社のものだという事実を知ったのであった。
 驚いた絵里子は、何と、人事部の面接官に対して、休耕田で2回もスーツ姿で泥だらけになった経験をカミングアウトしていたのだ。そして、ソフトボール部の恒例行事で使用しても良いかどうかの直談判までしていた。当然、泥んこ遊び用に一般に開放しているくらいなので面接官の回答はYESであった。

 イベント当日、絵里子は運命の不動産会社の最終面接だった。面接の手ごたえはよかった。内定を獲得する自信があった。それは、絵里子が面接会場を出るとき、最終面接を担当した役員との次のような会話からであった。
 「あっ、ちょっと・・・青野絵里子さん、あなたのことは色々と聞いておりますよ。弊社の休耕田で何度も泥んこ遊びしたらしいですね。今日はその田んぼを使ってイベントだとか。」
 「はい、田んぼお借りします。ありがとうございます。」
 「今日でリクルートスーツは着る必要はなくなりますから、大学時代の思い出として、そのスーツでイベントに参加してみてはいかがですか?」
 「(えっ・・・?)」
 「いや、冗談ですよ。(笑)スーツのままではさすがにできませんよね。それでは面接ご苦労様でした。」
 「(・・・?)ありがとうございました。」
 絵里子はわずか数十秒のこのやり取りで胸の鼓動が一瞬大きくなると同時に、内定を確信したのであった。

Dm17c2

 部の恒例イベントは午後3時から始まる予定だった。部長である絵里子の裁量で面接後、自宅に戻って着替えてくる時間を考慮して数日前に段取りを決めたのであった。
 イベントに参加するための服として用意してある上下白の練習用ユニフォームを取りに自宅に戻るはずであったが、面接開始時間が遅れたせいもあり自宅に戻ってからでは集合時間に間に合いそうにない。イベント開始時間をもう少し遅くからにすればよかったと後悔したが、今となっては手遅れだ。
 責任感の強い絵里子は、部長である自分が遅刻するわけにはいかず、やるしかないと思った。リクルートスーツ姿のまま休耕田へ向かう決意をした。

 「(あの休耕田と私って何か因縁があるのかな・・・。
)」
 絵里子は目に見えない何らかの力によって目の前にレールが敷かれていくような感覚に陥った。いつもなぜかあの休耕田へと辿り着くからだ。むろん、潜在意識が顕在化しているとも言えるが、そんなことではなく、何かが自分の背後から糸を引いているように感じるのであった。

 絵里子は歩きながら見納めとなるであろうリクルートスーツに視線を落とすのであった。

2019年10月 8日 (火)

就活の合間に泥んこ遊び…ストーリー公開

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 絵里子の目の前には休耕田が広がっている。ここは、この前、面接の帰りに卒業研究で使う生物を捕獲して泥だらけになってしまった場所だ。あの日、リクルートスーツのまま泥だらけになってしまった時の感覚が忘れられなかった。
 普段、リクルートスーツを着ている時は、泥などで汚れるのはもちろんのこと、雨で濡れたりしないようとスーツを綺麗に保つことに細心の注意を払うものである。しかし、だからこそ、自らの意志で濡れたり汚れたりするという非日常性に絵里子は引きつけられるのであった。この前、休耕田で泥だらけになってしまって以来、普段汚してはいけない服の代表格でもあるスーツを着たまま泥んこ遊びをすることに目覚めてしまったのだった。

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 この前、泥だらけにしてしまったリクルートスーツは自宅で丸洗いし、洗濯機で脱水し乾燥させた後、皺だらけのスーツをなんとか伸ばしてからクリーニングに出した。何とか就職活動で再び着ることができる状態に復活させたばかりであった。
 今、絵里子は、休耕田の前に立っているが、そのリクルートスーツではなく、なんとオフホワイトに近い色合いのベージュのスーツを着ている。このスーツは大学入学時に姉からもらったものだ。姉はすでに社会人だったが、もう着る機会がないからということで黒やチャコール色のリクルートスーツを含め、何着かスーツをもらってきたのであった。ベージュのスーツなんて
大学在学時に着る機会はないだろうと思っていたが、まさか、こんな時に着るときになるとは・・・・と不思議な気分であった。

 ゆっくりと田んぼの中に入っていく。パンプスは数歩足を踏み入れただけで泥にはまって脱げてしまうことは経験済だったので、脱いでパンストのみ穿いた状態で田んぼの中に入っていった。夏の炎天下、スーツ姿で田んぼの中に入っている光景は傍から見れば不自然なものに違いなかった。周囲には人が寄り付く気配はなく、気兼ねなく泥んこ遊びに興じることができる環境だった。
 まずは、粘着度の高い泥の上にお尻を着いて座ってみた。何度も何度も上下運動をして泥をスカートのお尻部分に着けるようにしたり、いざってみたりした。自分では確認することができないが、泥でスカートのお尻部分が大変なことになっているだろうことを考えると絵里子は気持ちよくなった。

 「(・・・お姉ちゃん、ごめんね。こんなことしちゃって・・・。)」
 姉が通勤時に何度か着用したと思われるベージュのスーツは泥まみれになる序章を終え、第二幕へと導かれるのであった。

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 絵里子は童心に戻った気分に浸り、少女時代に泥んこ遊びをした感覚を思い出しながら泥を手ですくって、田んぼの中で座り込んだままスカートの前面やジャケットに塗りたぐっていった。
 そして、気持ちを抑えきれなくなり、田んぼの上にうつ伏せになって泥に身体をあずけた。生温かくドロドロした感触がスーツ越しに伝わってくる。スーツを泥だらけにするという行為の代償に、天然のマッサージが絵里子の全身を気持ちよく癒してくれた。


 スーツの前面は泥だらけになっていたが、背中はまだ汚れていないであろうことが理子には分かっていた。どうせならスーツ全体を泥でコーティングしたいと思い、泥の中で仰向けになったりうつ伏せになったりを繰り返していった。
 そして、水と泥がちょうどよく混ざり合った部分を見つけ、人間ムツゴロウになって這いながら進んだ。スーツは泥が付着したというよりも、泥と同化したような状態になっていた。そして、さらに激しく、大胆に泥の中で遊んでいるうちにスーツはもうジャケットとスカートの境目が分からないほどになっていた。

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 泥だらけになることが・・・それもスーツのように普段、汚さないように注意して着るはずの服で泥んこ遊びをすることが、こんなにも気持ち良いものなのだと絵里子は心の奥底から感じた。
 この前、生物の捕獲で泥だらけになったのは、あくまでも結果的に泥だらけになった。それでも、いけないことをしてしまったという背徳感とそれを打ち消すほどの泥だらけの自分の姿に対する不思議な満足感があった。
 しかし、今日は、泥だらけになるためだけにスーツ姿でこの場所に来たのであった。絵里子の心に芽生え始めていた「泥だらけになること」に対する幸福感は強固なものになった。

 日が暮れ始めていたので帰り支度をしようと、未練ある泥田に別れの「全身ボディタッチ」をした。そして、田んぼの脇にある水道場でスーツにホースの水を勢いよくかけて泥を洗い流した。泥の塊は落ちるが、スーツの生地に染み込んだ汚れはかなりのものでいくら洗っても色が落ちない。オフホワイトに近いベージュ色だった生地が薄茶色になってしまった。
 一通り洗い終えるとジャケットを脱ぎブラウスの汚れもある程度落とし、歩いて帰りの途についた。絵里子は、また機会を見て泥んこ遊びをしにこようと思うのであった。

2019年9月16日 (月)

クリームまみれクリニック…ストーリー公開

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 絵里子は、幼稚園への就職内定を目標にし、就職活動で忙しい毎日を送っている。ストレスもたまる一方だった。このままでは精神的にまいってしまう・・・と自覚症状があるうちに、なんらかの心療的な措置をしないとならないと思っていた。

 そんな時、面白そうな心療内科クリニックの存在を知った。それは、なんと「クリームまみれクリニック」だった。
 嘘か本当か分からないが、そのクリニックの特徴は、その名の通りクリームまみれになることでストレスを軽減させ、心をリフレッシュさせることで心身ともに健康状態を取り戻すということであった。絵里子は興味を持ち、明日の面接の帰りに行ってみようと早速予約をした。このクリニックのウェブサイトには次のような文章が掲載されていた。

 -----たいていの病気は「気のやまい」なのです。あなたの心身に生じている事象を既存の病気の症状に当てはめ解釈する事によって病気というものが成立してしまうのです。しかし、当クリニックでは「クリーム施術」によって「気のやまい」を根本から癒し、心身の健康状態を取り戻そうという・・・・
・中略・・・・・尚、施術を受けるにあたってはかならず着替えを持ってきてください。その理由は・・・・・云々。」-----
 

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 絵里子は、翌日、予定通り面接の帰りにクリニックに行った。面接で着ていた黒のオーソドックスな2釦のリクルートスーツ姿だ。絵里子は「クリーム施術」の趣旨はしっかり理解していたので、リクルートスーツのままクリームまみれになることは織り込み済であった。
 担当の医師が現れると何やら簡単な説明を受ける。担当医いわく、汚してはいけない服を着てもらい、あえてその恰好でクリームまみれになる非日常性を体験することが大切なのだという。このことによって、困難を乗り越えていくことの疑似体験をし精神力を高め、クリームまみれになるという行為によりアドレナリンの分泌を促し、癒し効果を得られるとのことだ。

 絵里子は、クリニック内にあるいくつかの浴室の一つに通される。そこで生クリームの入った大きな袋をいくつか渡され、それを自分で自由に身体に塗り手繰っていくようにと指示を受ける。身体とは言っても、「今着ている服のまま」クリームまみれになることがこの施術の肝だ。
 先ほどまで面接で着ていた黒のリクルートスーツはタイトスカートのお尻部分に若干の座り皺ができているが、他には皺も汚れもなく綺麗だった。そんなリクルートスーツをクリームで真っ白に汚していくことを思うと、絵里子はなんか不思議な気分になった。同時に、何とも言えないドキドキ感が心の奥底から沸いてきた、
 心臓の鼓動が激しくなり、アドレナリンが大量に分泌されているのをはっきりと感じていた。

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 絵里子は床にお尻をつけ壁に背中をもたせかけた。そして、医師から「処方された生クリーム」をまずはパンプスや脚にかけていく。次にタイトスカートにかけていき手を使ってクリームを広げていく。
 医師からもっと大胆にという助言をうけると、絵里子は生クリームの袋を頭の上にもっていき、勢いよく袋を絞った。ボタボタト髪の毛やジャケット、スカートにクリームが落ちていく。髪の毛はもちろん、顔もジャケットもスカートもクリームでコーティングしていった。先ほどまで開襟の部分だけが白であったスーツ姿が今は全身白づくめだ。
 最後の仕上げとして粒状の五色スプレーをかけ「人間ケーキ」になった気分に浸って施術は終了した。

 さて、ここからも大変だ。真っ白に汚れたリクルートスーツをシャワーで洗い流していく。水をかけた部分が一瞬にして真っ黒になり、まだクリームで汚れている部分とのコントラストが美しかった。
 絵里子はクリームで汚れた髪や顔、ジャケットやスカート、パンプス・・・と全身を綺麗に洗い流していくのにかなり時間を要したが、この行為も非日常的なことで不思議な感覚を抱いた。

 汚れを落とし終わると、全身ずぶ濡れのリクルートスーツ姿の絵里子はすがすがしい表情で担当医にお礼を言うと浴室を後にした・・・。