クリームまみれクリニック…ストーリー公開
絵里子は、幼稚園への就職内定を目標にし、就職活動で忙しい毎日を送っている。ストレスもたまる一方だった。このままでは精神的にまいってしまう・・・と自覚症状があるうちに、なんらかの心療的な措置をしないとならないと思っていた。
そんな時、面白そうな心療内科クリニックの存在を知った。それは、なんと「クリームまみれクリニック」だった。
嘘か本当か分からないが、そのクリニックの特徴は、その名の通りクリームまみれになることでストレスを軽減させ、心をリフレッシュさせることで心身ともに健康状態を取り戻すということであった。絵里子は興味を持ち、明日の面接の帰りに行ってみようと早速予約をした。このクリニックのウェブサイトには次のような文章が掲載されていた。
-----たいていの病気は「気のやまい」なのです。あなたの心身に生じている事象を既存の病気の症状に当てはめ解釈する事によって病気というものが成立してしまうのです。しかし、当クリニックでは「クリーム施術」によって「気のやまい」を根本から癒し、心身の健康状態を取り戻そうという・・・・・中略・・・・・尚、施術を受けるにあたってはかならず着替えを持ってきてください。その理由は・・・・・云々。」-----
絵里子は、翌日、予定通り面接の帰りにクリニックに行った。面接で着ていた黒のオーソドックスな2釦のリクルートスーツ姿だ。絵里子は「クリーム施術」の趣旨はしっかり理解していたので、リクルートスーツのままクリームまみれになることは織り込み済であった。
担当の医師が現れると何やら簡単な説明を受ける。担当医いわく、汚してはいけない服を着てもらい、あえてその恰好でクリームまみれになる非日常性を体験することが大切なのだという。このことによって、困難を乗り越えていくことの疑似体験をし精神力を高め、クリームまみれになるという行為によりアドレナリンの分泌を促し、癒し効果を得られるとのことだ。
絵里子は、クリニック内にあるいくつかの浴室の一つに通される。そこで生クリームの入った大きな袋をいくつか渡され、それを自分で自由に身体に塗り手繰っていくようにと指示を受ける。身体とは言っても、「今着ている服のまま」クリームまみれになることがこの施術の肝だ。
先ほどまで面接で着ていた黒のリクルートスーツはタイトスカートのお尻部分に若干の座り皺ができているが、他には皺も汚れもなく綺麗だった。そんなリクルートスーツをクリームで真っ白に汚していくことを思うと、絵里子はなんか不思議な気分になった。同時に、何とも言えないドキドキ感が心の奥底から沸いてきた、
心臓の鼓動が激しくなり、アドレナリンが大量に分泌されているのをはっきりと感じていた。
絵里子は床にお尻をつけ壁に背中をもたせかけた。そして、医師から「処方された生クリーム」をまずはパンプスや脚にかけていく。次にタイトスカートにかけていき手を使ってクリームを広げていく。
医師からもっと大胆にという助言をうけると、絵里子は生クリームの袋を頭の上にもっていき、勢いよく袋を絞った。ボタボタト髪の毛やジャケット、スカートにクリームが落ちていく。髪の毛はもちろん、顔もジャケットもスカートもクリームでコーティングしていった。先ほどまで開襟の部分だけが白であったスーツ姿が今は全身白づくめだ。
最後の仕上げとして粒状の五色スプレーをかけ「人間ケーキ」になった気分に浸って施術は終了した。
さて、ここからも大変だ。真っ白に汚れたリクルートスーツをシャワーで洗い流していく。水をかけた部分が一瞬にして真っ黒になり、まだクリームで汚れている部分とのコントラストが美しかった。
絵里子はクリームで汚れた髪や顔、ジャケットやスカート、パンプス・・・と全身を綺麗に洗い流していくのにかなり時間を要したが、この行為も非日常的なことで不思議な感覚を抱いた。
汚れを落とし終わると、全身ずぶ濡れのリクルートスーツ姿の絵里子はすがすがしい表情で担当医にお礼を言うと浴室を後にした・・・。
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