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カテゴリ「ウェット・ストーリー」の76件の記事 Feed

2020年5月26日 (火)

ずぶ濡れヨガセラピー…ストーリー公開

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 中学時代からソフトボール部に属し運動が得意である絵里子は、大学でもソフトボール部に属しながら他にも色々なスポーツや運動にもチャレンジしている。その中の一つにヨガセラピーがあり、実はインストラクターの資格試験を受けるための練習を日々おこなっていた。
 大学4年という事で就職活動で忙しかったが、面接や筆記試験などの合間にオンラインレッスンやヨガスタジオでのベテラン女性講師との個人レッスンなどを受けるとともに、自宅で学んだことを毎日反復練習するなど真面目に取り組んでいた。
 絵里子は数週間のレッスンを受けた後、個人レッスンを担当している先生から資格試験を受ける前に実技のチェックをしてあげるからと言われ、スタジオに行く約束をした。

 ある日の事、面接帰りに電車の中で絵里子は何か頭の中でひっかかるものがあり、気になっていた。
 「(あれ、何か忘れてる気がするんだけど・・・。)」
 最寄り駅を降りて、自動改札を通過しようとしたときに、その「忘れていたもの」を思い出した。
 今日はヨガセラピーの資格試験に向けての特訓のために先生の前でこれまでの練習成果を披露することになっていたのだ。
 「(あっ、今日は特訓の日だったわ!急いで行かなくちゃ!)」
 さいわいヨガスタジオは絵里子の自宅のある最寄り駅から近かったため、走って行けば先生との約束の時間には何とか間に合いそうであった。

 スタジオに着くと先生は不機嫌そうであった。
 「あなたのために時間を空けて待っていたのに2分遅刻ですね!」
 「すみません。(たかが2分じゃない!)」
 「遅刻の罰として、レッスン中にシャワーで水をかけちゃいますからね!今日は暑いですし、水をかければちょうどいいかもしれませんよ。
屋上スタジオで始めるから、はやく着替えてください!」
 「あっ!」
 「何ですか?」
 絵里子は、今日の特訓の事は先ほど駅で思い出すまですっかり忘れていたたため、いつもヨガのレッスンの時に着るヨガウェアを持っていなかった。
 「先生、ウェアを忘れてしまいました・・・」
 「遅刻のうえにウェアを忘れたのですか!?」
 「あの、今日、面接の日で・・・すっかり今日の事・・・」
 「言い訳はいいです!日を改めてもいいけど、試験日は今度の日曜でしたよね。それまでに私も時間を作れるか分からないわよ。」
 「先生!このリクルートスーツのままやります!」
 「動きずらいでしょうに。でも、あなたがやるなら、それでも良いですよ。でも先ほど言った罰は受けてもらいますけど?」
 「はい、構いません。お願いします。」
 先生はちょとだけ驚いた顔をした。リクルートスーツ姿の女子大生にシャワーをかけるなどというおそらくは初めての経験に対して戸惑いもあった。

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 先生の号令と共に試験前の特別特訓レッスンが始まった。絵里子は日ごろの練習の成果を先生に見せるため、はりきって床にうつ伏せになったり仰向けになったりして、ヨガポーズを次々に披露した。
 「(さすがに先生もシャワーをかけたりする気はないんだわ。)」
 5分、10分と時間が過ぎていき、一連のヨガエクササイズを実施した。
 屋上スタジオの床の上でヨガをしたために、絵里子のリクルートスーツは若干の砂埃で汚れ、皺ができていたが、遠くから見れば目立たないレベルであった。絵里子は先生の評価を待っていた。
 「絵里子さん、そこのお風呂にはいりなさい。」
 「えっ、スーツのままですか?」
 「もちろんです。私、罰としてシャワーをかけるといったけど、ポーズの確認に集中してて、シャワーかけるの忘れたわ。(笑) だから、その代わりと言ったらなんだけど、スーツのままお風呂に入りなさい。」
 スタジオの屋上には露天風呂があったが、それはヨガレッスンが終わった後に入るためのものであった。
 絵里子は先生の意外な発言を潔く受け入れ、それで先生の気持ちが収まってくれるのであれば良いと思った。先生を怒らしたら、今後のことに影響し、予定通りヨガセラピストの資格を取得できなくなってしまうのではないかと危惧した。ここでリクルートスーツをずぶ濡れにしてしまう事と、資格の取得が遅れることを天秤にかけた絵里子の決断はすでに決まっていた。もともとシャワーをかけられる覚悟で臨んだ今日の特訓なのだ。これといって大きな違いはないとも感じた。

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 絵里子はリクルートスーツのままバスタブに浸かった。先ほどまで面接会場で着ていた恰好でお風呂に入ると濡れたスーツに身体を締め付けられたが、その感覚に程よい気持ちよさを感じた。意外な体験だった。
 先生が言った。
 「先ほどとは違ったことをやってみなさい。合格のためには色々な持ちネタを組み合わせた動きができるかが重要ですからね。」
 絵里子は、お風呂から出ると、先ほどの動きにアレンジを加えたり、異なったポーズを披露した。濡れた状態のリクルートスーツのまま色々なポーズをとるのは動きずらいので大変に感じた。さらには、先生が絵里子の身体に向けてシャワーをかけ始めた。しかし、絵里子は何事もないように涼しい顔をしながら運動を続けている。
 黒のリクルートスーツなので濡れているのかどうかが分かりにくいが、シャワーをかけると濡れた部分が日光に反射して光った。

 先生によって容赦なくシャワーを何度もかけられるが、絵里子は粛々とポーズをとって、来たる試験のために頑張るのであった・・・。

2020年5月 5日 (火)

ツイスターゲームで罰ゲーム…ストーリー公開

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 絵里子は就職活動の面接の帰りに「いつものプール」に行って友達とストレス発散をしようとしていた。「着衣水泳」など、リクルートスーツのままずぶ濡れになって遊ぶことの楽しさ・気持ちの良さを一緒に分かち合える仲であった。
 
 風が吹くと若干肌寒く感じるので、絵里子はリクルートスーツの上にコートを羽織っていた。プールの水温が冷たくないかと気になったが、スーツのままプールに入っている間は寒くないことを知っていたのであまり気にはならなかった。
 一緒に遊ぶ友達は「いつものプール」で待っているとのことなので、面接が終わると絵里子は急いだ。プールに到着すると、プールサイドにリクルートスーツ姿の友達がツイスターゲームの準備をしていた。
 「何、これ?」
 「何って、見ての通りよ。」
 「一緒にプールで着衣水泳とかして水遊びするんじゃないの?」
 「そうよ、ツイスターゲームをやって負けた方が罰ゲームで先に一人でプールに入るっていうのはどう?」
 絵里子は、なぜか、勝てるという根拠のない自信があった。罰ゲームなんだから、勝って友達にはコートも着てかばんも持ってプールに入ってもらおうと考え、その伏線として友達を挑発した。
 「もし負けたら、コートも着てリクルートバックも持って入ることにしようね!」 
 ルーレットを回し続け、ギブアップするまでに何回ルーレットを回したかで競うことにした。

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 友人からの番だった。
 「(右足赤、左手赤、右手緑・・・・)」
 難しいと思われる体勢も意外なほどの身体能力の高さを見せつけながら難なくクリアし続けた。ルーレットを23回も回したところでギブアップした。
 次は絵里子だ。コートを脱いで、軽く準備体操をするとゲームを開始した。23回以上クリアしないとならないというハードルの高さを前にして少し焦りを感じていた。1回、2回・・・・10回、11回・・・と卒なくクリアしていったが、12回目のことだった。
 大股に脚を開かなくてはならない状況になった。タイトスカートのため脚を思うように開くことができなくなってしまった。絵里子は力を入れてさらに脚を開こうと試みる。少しずつではあるが右足が一番外側の赤い円の中に届きそうになった。
 「(あっとちょっと・・・。)」
 と思い、絵里子がほんの数センチだけ、さらに頑張って脚を開いた時であった。
 ビリッという鈍い音と共にタイトスカートのスリット部分が裂けてしまった。
 「(あっ、嫌だ・・・!)」
 と、条件反射的に脚を閉じ、スカートのお尻の方へと手をあてて、破けたスカートの状態を確認した。この瞬間、絵里子の負けが確定した。友達にコートを着てリクルートバックを肩にかけるように促される。携帯や面談資料、書籍、私服の着替えなどバックの中身は全て出して空にした。そして、プールサイドに立った。

 「罰ゲーム!罰ゲーム!」
 という友達の明るい声が聞こえてくる。
 意を決して絵里子はプールの中に入っていく。リクルートスーツのままプールに入ったことは何度もあるが、コートを着てリクルートバックまで持って入るのは今回が初めてであった。自分で言い出したことではあるが、まさか負けてこんな羽目になるとは惨めに感じた。
 リクルートスーツをずぶ濡れにすることは前もって分かっていたことであり、着替えも持ってきているので問題ないが、コートやバックまでは濡れることは想定外であった。
 絵里子はいわゆる「完全就活スタイル」でプールの中を歩き始めた。しばらくしてプールから上がるとコートやスカートなどから勢いよく水が滴り落ちた。

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 コートを脱ぎ、バックをプールサイドに置くと再びプールに入った。当然ではあるが先ほどよりも動きやすかった。何度か経験したことのある気持ちの良い感覚であった。着衣水泳をしたり、脱げた靴を潜って拾ったりして一人でプールの中で遊んだ。
 水中では意外と衣服に力が加わるのか、絵里子が一旦プールから上がると、スカートのスリット部分の裂け目が先ほどよりも広がっていた。しかし、今となっては絵里子は気にはしなかった。ツイスターゲームで破けた時点で、このスカートはもう履けなくなることを覚悟していたからだ。

 プールサイドに座って足をプールの中に入れてくつろいだ。その間、友達がリクルートスーツのままプールに入って気持ちよさそうに泳いでいるのを眺めていた。
 しばらくして、疲れてプールから上がってきた友達と入れ替わりに絵里子は再びプールに入った。今度はさらに本格的に泳げるようにと、ジャケットを脱いでもっと動きやすい恰好になった。
 平泳ぎを何往復もした。いつもはスカートが足腰を締めつけるので脚を自由に動かせなかった。しかし、今日はスリットが破けていて、脚の可動域が大きくなったせいか脚をおもいっきり開いていつもより推進力を獲得して速く泳ぐことができた。
 何往復も泳いでいるとさすがに疲労がたまってきたのでプールサイドに上がろうとした。そして、シャワーを浴びて帰ることにした。

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 プールから上がると、友達が絵里子に声をかけた。
 「絵里子!スカートすごいことになってるよ!」
 絵里子は後ろを振り返りスカートの後ろ部分に目をやった。先ほどよりもさらにスリットの裂け目が大きくなっていて、下着が丸見えであった。気の置けない友達の前とはいえ、さすがに絵里子はスリットの両側を手で引き寄せて下着を隠した。

 「これじゃ、もう絶対に穿けないじゃない!」
 そうつぶやくと、恥ずかしそうにシャワールームへと向かっていった・・・。

2018年9月11日 (火)

明日に迫った着衣水泳指導

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 絵里子は教育実習生の女子学生に対する着衣水泳指導を任されることになり、連日、一人で放課後になるとスーツを着て練習に励んでいた。
 しかし、その練習も今日が最後となった。いよいよ着衣水泳指導が明日に迫ったのだ。明日からリクルートスーツに身を包んだ現役女子学生を迎え、一緒にスーツ姿のまま着衣水泳をすることになる。

 今日もまたスーツ姿で絵里子はプールサイドにいる。チャコールグレーのスーツだ。
 最近の日課となっているが、まずはプールサイドで軽くシャワーを浴びる。濡れた箇所がグレーから黒っぽく変色していくのがよくわかった。次は、水を自分の身体に向かってかけていく。スーツはさらにずぶ濡れとなっていった。
 この一連の流れも着衣水泳指導の重要な事項の一つとなっている。絵里子にとっては、もう何の躊躇もなくできることではあるが、就活生にとっては、教育実習の一環でリクルートスーツを濡らしてしまうことに、かなりの抵抗があることが想像できる。こうした実習生たちの気持ちも考えながら指導していくことになるだろう。

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 絵里子は、指導の流れをイメージしながらプールの中へと入っていく。スーツを着たまま水の中に入った時の感覚をいつものように確かめながら水中歩行を行う。歩行に慣れてきたところで平泳ぎを開始し、プールを往復した。
 明日からの指導の最終チェックとなっている今日の練習は、自然と緊張感も高まってくる。
 スーツを着用したままの平泳ぎで身体が受ける負荷をしっかりとフィードバックし、学生たちの指導に役立てようと、いつにもまして気合を入れて泳ぐ。

 ある程度泳いだら潜って反対側のコースへと移動し、再び水中歩行を行う。泳いで疲れた後なので先ほどよりも身体への負荷が大きくなかなか進めない。コースの端から端までなんとか歩ききると、小休止のために梯子を使ってプールサイドへと上がる。スーツのジャケットやスカートからは勢いよく水が滴り落ちる。プールサイドを歩いてプールの浅瀬がある部分へと移動する。

 少しだけ身体を休めると、浅瀬の中に入って、ストレッチを行ったり、水をかけたりして、スーツのままで水の中にいるとどのくらい動きにくいのかをチェックする。もちろん、こうしたことも着衣水泳指導時には大いに役立つ情報である。
  

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 いよいよ練習の最後の項目となった。ジャケットを脱いだ状態での平泳ぎだ。先程のジャケットを着た状態での平泳ぎと、脱いだ状態とではどのくらい泳ぎにくさに違いがあるのかを比較するのが目的だ。
 この実習項目では、下着が透けてしまう。着衣水泳指導が男女別に実施され、絵里子が女子学生の指導を任されることになっている理由がここにある。
 絵里子は、ジャケットを脱ぐと軽やかに平泳ぎを行うことができた。やはりジャケットを着ている時と比べると腕の可動範囲が広がり、スムーズに動かせるので泳ぎもダイナミックになる。プールの端までたどり着くと一呼吸置き、元の位置まで最後の力を振り絞って戻ってくるとプールサイドへと上がった。そして、今さっき脱いだジャケットを肩にかけると、更衣室へと向かった。

 「(練習もこれで最後なのね。)」

 明日に迫った着衣水泳指導のことを考えると、だんだん緊張してきた。しかし、リクルートスーツ姿の女子学生たちと一緒にプールに入ってずぶ濡れになることを考えると、不思議と楽しい気分になり、リラックスできた・・・。
 
 
(おわり)

 

2018年7月22日 (日)

教育実習生時代の記憶

 暑さの厳しい日が続く中、絵里子は教育実習生の女子学生たちへの着衣水泳指導のために練習に励んでいる。ここ数日の間は毎日、帰宅前の30分くらいはスーツを着たままプールに入ってずぶ濡れになるのが日課だ。
 教師としてベテランの域である絵里子は、スーツを数十着は保有している。連日、クローゼットの奥に眠っている、もう着ないであろうと思われるスーツを取り出しては練習のために通勤時のスーツとは別に持参してきている。

 昨夜も、もう着ないだろうと思われるスーツをクローゼットの奥の方から取り出そうとしていた。奥のまたその奥に・・・取り出してくれと言わんばかりに絵里子をなぜか引きつけたスーツがあった。それは、絵里子が教育実習生の時に着用していた「思い出の」リクルートスーツであった・・・。
 就職活動をしていた頃、絵里子はいくつかのメーカーや商社も回っていて、本命は某大手の商社であったが、結局本命を含め、どこの会社からも内定をもらうことができず、教育学部という自分の立場を生かして教員免許取得へと大学三年時に、急遽、舵を切り、首尾よく教員になれたという過去があった。

 
 ・・・教育実習生時代の絵里子・・・

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 今、絵里子は着衣水泳指導を受ける女子数名と一緒に、リクルートスーツ姿でプールサイドに立っている。
 みんな、タイトスカートのおしりには深くて長いヨコ皺が何本かあり、お尻部分の生地はテカって見える。ジャケットの背中にもしわがあり、就職活動でかなりスーツを着こなしているということを物語っていた。
 当然、この着衣水泳実習には、何着か持っているスーツの中で一番古くて着こなされたスーツで臨み、着替えにはまだそれほど着ていない新しめのスーツを持ってくるのが普通だ。着衣水泳実習では、教室での授業実習時の服、つまりスーツで参加することが義務図けられていたからだ。
 絵里子は、そうしたことも踏まえ、着衣水泳実習に備えてスーツを1着新調していた。黒の2ボタンで無難なデザインだ。教師になってからでも着用できるようにとの思いもあった。

 絵里子はなんと、今、今朝おろしたばかりのそのリクルートスーツを着てプールサイドに立っている。新品でしわひとつないスーツを着ているために逆に絵里子は目立った。
 実は、今日、実習の一つとして「着衣水泳」があることをうっかり忘れていたのだ。絵里子は泣きそうな気分だった。着衣水泳実習があることを忘れていたために着替えなど持ってきていない。おまけに、今着ているのは新品のスーツだ。
 しかし、そんな絵里子の気持ちはおかまいないしに実習は淡々とスタートしていく。当然といえば当然のことである。

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 指導教師の号令がかかる。
 「では、みなさん、プールの中に入る前に準備体操しましょう!」
 参加者たちはみんな腕立てや腹筋を数回こなし、ストレッチも念入りに行う。絵里子もこの先のことを考えながら腹筋をしていた・・・。
 シャーー。シャーー。
 突然、どこからともなくシャワーがスーツに降り注いできた。土砂降りとまではいかないが、本降りの雨のような水の勢いである。絵里子だけでなくほかの女子学生たちのスーツにも降り注いでいる。
 「今日はスーツは濡らした状態でプールに入ります。服を着たまま濡れた状態の感覚を覚えてもらうのが今日の実習の目的ですので。」
 絵里子のスーツは今朝新調したばかりのため、水をはじいていたがしばらくシャワーを浴びているとさすがに水が徐々にしみ込んできた。たちがると、水をずっしりと吸い込んだスーツの重さを感じた。

 プールサイドに座りバタ足をしたり、自分に向かって水をバシャバシャとかけてさらにスーツを濡らしていくと、水の冷たさにも慣れてきたのでプールの中に入っていった。
 まずは浅瀬でスーツを着たままの状態で水中感覚になれたら、何度ももぐり、頭から全身が水に浸かった状態で自由な動きがどのくらいできるかを確認した。その後、プールの中でビート板の浮力を借りて、自分の体を浮かせることをした。最初のうちはビート板を使ってもなかなかうまく浮くことができないが、しばらくすると水面にあおむけの状態で浮くことができた。ずぶ濡れになったリクルートスーツのスカートやジャケットが水面から出て室内の蛍光灯のあかりに反射して光沢を放っていた。

 

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 「最後に、泳げる人は着衣水泳を体験してください。」
 と指導教師がいうと、絵里子はじめ数名の女子学生がずぶ濡れとなったスーツ姿のまま再度プールに入って泳ぎ始めた。中には泳げない参加者もいたが、彼女たちは後日、水泳教室を受けることになっている。
 絵里子は、小学生時代にスイミングスクールで一通りの泳法をマスターしたが、スーツ姿で泳ぎにくいということもあり、平泳ぎをした。久しぶりに泳いだが、いい感じの泳ぎだ。

 おろしたてのリクルートスーツで泳いでいることを忘れてた・・・。ずぶ濡れのスーツ姿でこのまま帰宅しなくてはならないことも今は頭の中にはなかった。
 スーツのまま泳ぐことが、こんなにも気持ちいいのかという意外な発見に驚いていた。

 その感覚を堪能していると、周囲が明るくなった。


 今、絵里子は、昨夜クローゼットの奥から取り出した、思い出の詰まった黒のリクルートスーツを着て、プールサイドに立っていた。

 (おわり)

 

2018年5月24日 (木)

着衣水泳指導に向けて

 梅雨入りの時期が近づく季節になった。毎年この時期になると全国各地の学校では、教育実習が始まる。絵里子が教師として勤務している高校でも、何名かの教育実習生を迎え入れることになる。

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 絵里子はこの学校の中でもベテランの域になり、今年から教育実習生や新人教師の女性の指導を任せられることとなった。
 この高校では、珍しく着衣水泳の実習が独自に設けられている。近年、全国的にゲリラ豪雨などが発生し、都市部であれ田舎であれ、いつどこで洪水などの予期せぬ水災害が起きるかわからなくなってきている。通勤・通学時や帰宅時を想定し、通勤・通学時や帰宅時の服装のまま水災害から身を守る訓練をすること重要性が高まりつつある。
 さらには、絵里子の勤務する学校周辺には土地柄、ため池や貯水槽が点在していた。そのため、不注意などでそうしたところに落ちた場合を想定しての訓練が学校の室内プールで定期的に実施されている。

 もちろん、絵里子は過去に何度も訓練を受けてきたが、実習生を指導するのは今回が初めてである。
 自分が着衣水泳を行うのと、指導するのとでは勝手が違う。うまく学生たちを指導できるかが心配な絵里子は、放課後に一人で指導の練習をすることにした。

 教育実習生はリクルートスーツ着用が義務付けられている。通勤や帰宅時を想定しての訓練のため、実習生たちはリクルートスーツのまま着衣水泳の実習に参加することになっている。
 絵里子は教師という職業柄、多くのスーツを保有しているが、学生たちの大半は2着程度しかスーツを持っていないのが普通だ。スーツのままずぶ濡れになることは、事前に実習内容が明らかにされるとはいえ学生たちにとってはかなり衝撃的な経験となるはずだ。
 絵里子は、そんな学生たちの心に少しでも寄り添うために、日頃から通勤や授業の時に着ているスーツ姿で着衣水泳の指導を行うことに決めていた。

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 今、絵里子は朝自宅から着てきた黒のスーツに身を包んでプールサイドを歩いている。いきなりドボンと入るわけにはいかない、先ほど軽く体を動かしているので、準備体操はとばし、まずはシャワーをゆっくり浴びていくことにした。
 髪の毛から徐々に水がかかっていき、ジャケットを滴りスカートまで水が到達した。ずぶ濡れというほどではないが、雨の中、傘もささずにしばらく街を歩いているときのような状態だ。
 その後、プールの縁に座りバタ足をして体を動かし温めていき、水の中に入る準備を整える。

 そして、いよいよ、スーツのままプールの中に入った。
 温水プールで水は温かく気持ちよいと思ったが、スーツのまま水の中に入るというのは、やはり変な感覚だった。
 しかし、リクルートスーツのままプールの中に入る教育実習生のために、一生懸命に指導の練習をしないといけないという使命感で絵里子はいっぱいだった。指導要領にそって指導手順を確認していた。
 プール内の歩行をしばらくおこなうと、今度は、平泳ぎである。万一、着衣のまま池などに落ちた場合、一番泳ぎやすい泳法は平泳ぎとされている。ただ、スーツのジャケットを着こんだまま水の中に落ちた場合、かなり泳ぎにくくなる。この泳ぎにくさを身をもって経験することが、この着衣水泳指導の肝である。

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 その後、プールの浅瀬に移動して水の中で色々なポーズでストレッチをしてスーツを着たままでどのくらい自由に体が動くのかをチェックした。
 また、立ち上がったり、全身水に浸かったりして、水を含んだ状態で陸上にいる感覚と、水の中にいる感覚とを比較もした。これも、着衣水泳指導を行う上では重要な体験である。
 実習生にもこのことをしっかりと体験させる必要がある。絵里子は何度も繰り返し、その感覚を自分の言葉で実習生たちに伝えられるように努めた。

 次はクロールの練習だ。これは、無理をせず泳ぎが得意な者だけを対象とするように注意書きがあった。絵里子は自分では泳ぎは得意なほうだと自負があったので、スーツのままクロールで泳ぐのがどのような感覚なのかを確かめた。
 平泳ぎよりも困難で、さすがの絵里子も自由に泳ぐことができなかった。この経験も指導の際にフィードバックされる。これで、一通り着衣水泳指導の流れをこなした。

 最後は、着衣水泳指導とは関係ないが、プール脇にある大浴場でくつろぐことにした。すぐに体がポカポカしてきて気持ちよくなった。
 浴槽の中で体を浮かせてみるとそのまま寝てしまいそうになった。着衣水泳の疲れはとれリラックスできたが、実習生への指導に関して一抹の不安を抱きながらプールを後にする絵里子であった

2017年7月14日 (金)

女子学生のための就活塾①

 今の時代、就活で内定を獲得しやすくするために「就活塾」というものが盛況だ。絵里子は、本格的な就職活動を来年に控え、大学3年時から「就活塾通い」の決意をした。
 絵里子が選んだ就活塾は女子学生にのみ門戸を開いており、普通の就活塾とは一線を画している。ウリは、ある「属性」をもつ会社経営者が運営する会社への就職内定率は100%だということである。
 その「属性」とは、ずばり、女子学生のリクルートスーツ姿が大好きな「リクスーフェチ」であり、かつ、リクルートスーツのままプールに入ったり入浴したりする様子を観察するのが好きな「ウェットフェチ」であるということだ。こうした趣向をもった会社経営者との太いパイプをいくつも持っている某就活塾に絵里子は意を決して入塾した。

 この就活塾は毎週1回、自らもリクルートスーツ&ウェットフェチである塾長直々のプライベートレッスンを受けられる。全3回でクライアントである会社経営者が好みそうな「行為」や「趣向」を習得する。そして、習得したことを「特別面接」の際に披露すれば100%内定を獲得できる。

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 「失礼します。」
 いよいよ就活塾の第1回目の講座だ。濃紺リクルートスーツに身を包んだ絵里子は、面接時のマナーを意識してドアをあけた。
 室内に通され、ソファーに座った。今日は講座の初日ということで塾長との雑談がメインになっている。その後、「リクルートスーツウェット」の醍醐味についての話も聞く。百聞は一見に如かずということで、映像を収めたDVDを視聴し、内定獲得のためのエッセンスを学ぶはずであったが・・・。
 「DVDが見当たらないぞ。」
 どうやら視聴するはずだったDVDが無いらしい。塾長はDVDをなくしてしまったのだろうか!?
 否。これは計画的なことであった。
 絵里子は、面接を行っている室内や、DVDデッキ、テレビの周辺を探すが見つからない。見つかるはずがない・・・!
 「この部屋以外にどちらに行かれましたか?」
 絵里子が尋ねると塾長はわざとらしく答える。
 「そういえば、さっき、プールサイドに行ったかな~。」

 絵里子はリクルートバックをしっかり肩に掛け、塾長と一緒にプールのある方へと移動する。プールの水面がキラキラ輝く光景に見とれるが、その反射光でまぶしくもあった。絵里子は、プールサイド周辺を一瞥するがDVDなど見つからない。しかし、プールの中に目を落とすと、ケースに入ったDVDが沈んでいるのに気が付いた。

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 絵里子はこの就活塾の目的に思いを馳せ、全てを悟った。
 「何かのひょうしでプールに落ちたのかもしれませんね。探してきます!」
 躊躇することなくリクルートスーツを着たままプールの中に入り、水中のDVDを拾う。
 「ありましたよ!」
 塾長の思惑通りであると同時に、絵里子が塾長の意図する事を忖度した結果でもあった。見つけたDVDは自宅で第2回目の講座の時までに視聴してくることが宿題として課され、リクルートバックの中にしまう。

 DVDを見つけたご褒美として、塾長からプールの中にしばらく入っていても良いという許可をもらう。すでにずぶ濡れになって真っ黒に変色した濃紺リクルートスーツのまま再びプールに入ることは何の抵抗もなかったが、プールに入ることが「ご褒美」なのかと絵里子は疑問に思った。
 しかし、炎天下で熱を吸収しやすい黒のリクルートスーツ姿でプールサイドにいるよりは、プールの中の方が涼しくて気持ち良く感じるのは事実だ。ある意味、ご褒美かもしれない・・・とも感じる絵里子であったが、この思考経路こそ塾長が敷いたレールにほかならない。

 しばらくすると、塾長からリクルートバックを持ってプールに入るとクライアントさんからの印象が良く、さらに内定をゲットしやすいという情報をもらう。絵里子は素直に実行に移す。
 スーツのままプールの中に入るのは今日が初めての経験だったが、リクルートバックも持った状態でというのがさらにシュールなことに感じた。リクルートバックを持ったままプールにしばらく入っていたせいか、DVDを落としてしまったらしく、カバンの中には見当たらない。
 「あっ、さっきのDVD落としてしまったみたいです。」
 絵里子は再び潜ってDVDを拾うと、プールからあがり、プールサイドに置かれたチェアーベットに身体をあずけてくつろいだ。

 就活塾1回目で、絵里子はリクルートスーツフェチやウェットフェチについて、なんとなく分かった気がした。2回目以降はさらにハードな内容になるという。絵里子は今日もらったDVDでしっかり学習して次回以降に備えようと意気込んだ。
 

2017年4月13日 (木)

就活女子学生の秘密①

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 都内のとある賃貸マンションの一室。慣れないリクルートスーツに身をつつんだ就活中の女子学生、絵里子。

 就職活動をおこなう女子学生を取り巻く環境は依然として厳しい。大学の授業はもちろんのこと、入学時から属している体育会系サークルの活動、さらには生活費や就活費を稼ぐためのアルバイト、卒論準備など、絵里子のように「まじめな」女子学生にとって就職活動は心身ともにハードなものとなる。時間はいくらあっても足りない。

 大学4年になった絵里子は4月になって本格的に就職活動を開始した。就職活動によるストレスはかなりのものだった。
 絵里子は就職セミナーから帰宅するとリクルートスーツから私服へと着替えるのも億劫に感じた。リクルートスーツのまま浴室へと向かった。いま流行りのウォッシャブル・リクルートスーツを着ている絵里子は、そのまま入浴し、ついでに洗濯すればよいと考えた。

 まず、シャワーを浴びてから入浴し、湯船に浸かってリラックスしたら洗髪もした。身も心もリフレッシュすると同時に、リクルートスーツのまま入浴するという行為に、不思議な感覚を覚えたのだった・・・。

2016年10月29日 (土)

着衣水泳部への体験入部③

 午後3時の休憩後、参加者たちは新たな服に着替えてプールサイドに集合した。
 絵里子は、なんと帰宅時用にと持ってきたはずの濃紺リクルートスーツ姿だ。後先の事を全く考えていない。絵里子はすでに、着衣水泳というか、服のままずぶ濡れになっていくという行為の何とも言えない楽しさに目覚め、その虜になっていたのであった。

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 絵里子はたまたま持ってきていた水風船を先輩に差し出し、プールサイドで遊ぶことを申し出た。
 先輩はそのことを快諾したが、「着衣水泳部」の成員である以上、心の中には悪だくみを抱いていた。水をかなり含ませ今にも割れそうなほどに限界ギリギリまで膨らませた水風船を使って、絵里子の望み通りプールサイドでキャッチボールを始めた。
 なかなか割れず、二人の間に退屈感が漂い始めたころ、先輩が絵里子に細工を施した。絵里子は素直に受け入れた。

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 次の瞬間から先輩が絵里子に投げる水風船は、かなりの確率で割れだし、たくさんの水が絵里子の濃紺スーツにかかる。何度も繰り返されるうちに、絵里子のスーツの前面はジャケットもタイトスカートもずぶ濡れで、水はブラウスはもちろんのこと、下着にもしみこみ始めていた。裾からは水がしたたり落ちる。
 しかし、絵里子は意外にも笑顔で、自分が置かれている状況を楽しんでいるようであった。

 水風船を使い果たすと、プールサイドには水風船が割れた残骸と、ずぶ濡れとなったスーツ姿の絵里子が存在しているだけであった。

 「(これだけ濡れたらプールに入ったのと変わりないわ)」
 と絵里子は内心思っていた。
 「絵里子ちゃん、そんな濡れちゃったんだから、いっそのこと泳ごうよ。」
 「あっ、はい・・・そうですよね・・・。」
 先輩は思惑通り自分の悪だくみが実現し、しかも、かわいい新入女子学生に対する支配感を味わっていた。
 否。
 実は、これは絵里子が先輩をこのように誘導しただけであった。そもそも「水風船」を用意したのは絵里子だ。

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 絵里子はこの体験入部を通して偶然にも「服のまま濡れる」という行為に快感を覚えたものの、その行為に至るまでは、自発的というよりも、受動的、あるいは偶発的、つまり自分だけの判断によるものではない過程で実現されることの方により興味を持ち始めていたのだった。

 絵里子はプールに入り、あたかも先輩に操られているかのように(実は、逆に絵里子が先輩を操っているのだが・・・)、「従順に」ビート板を使って泳いだり、何度も水中にもぐったりしながら、わざとスカートがめくれ上がるようにし、先輩の目をひくように大胆に振舞い続けた。
 この体験入部に持参したスーツ3着は全てずぶ濡れとなった。いずれかのスーツを着て帰宅の途につかなくてはならなくなった代償を払う代わりに、新たな「楽しみ」を見つけ、充実した思いをかみしめていた。
 すでに、絵里子の中では、着衣水泳部への入部は確定的であった。この世界にいざなわれた絵里子の行く末は誰も知る由はない。

  終わり
 

2016年9月12日 (月)

着衣水泳部への体験入部②

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 昼食後、再びプールに集まって午後の部が開始された。
 絵里子はライトグレーの3つボタンスーツを着ている。塾講師のアルバイトの際に着回しで着用しているスーツの一つだ。
 午後も午前中に面倒を見てもらった先輩の男子部員からマンツーマンで指導を受けることになった。どうやらその先輩から気に入られたようだ。着衣水泳部といえども、絵里子は泳ぐことはおろか、水への恐怖心が完全に除かれていないということもあり、もっとプールの水になれる必要があった。

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 先輩の案で、プールの中を歩行したり、潜って移動する練習をすることになった。単にプールの中を歩き回るだけではつまらないということで、プールにいくつかのボールを投げ入れて、それをできるだけ早く拾い集めるというゲームを2セット行うことにした。

 絵里子はカラーボールをプールのあちらこちらに投げ入れた。いきなり冷たいプールに入るといけないとのことで、先輩がシャワーで水をかけた。
 ジャケットもスカートも濡れた個所が徐々に黒っぽく変色していった。ある程度スーツが濡れたということもあり、絵里子は何の抵抗もなくプールに入ってボール拾いを開始することができた。
 近くに2つ3つとかたまってボールが浮いている場合もあるが、一度に1つだけボールを拾い、それをプールサイドに置くというのがこのゲームの決まりだ。必然的にボールの数とプールサイドとの往復の回数が一緒になる。時折、プールサイドに完全に上がったりもした。その時は、ジャケットやスカートの裾から激しく水がしたたり落ちた。

 水の中を歩くのは、簡単そうに思えて意外と水の抵抗で進むのが大変で、1セット終えるのにけっこう時間がかかった。

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 2セット目は1セット目もよりも時間を短縮することがミッションだった。
 隣のレーンへ移るときはコースロープの下を潜るという決まりだった。これも絵里子が早く水に慣れるようにという思いから先輩によって与えられた「試練」だった。水中から顔を出すたびに絵里子は顔を手で覆って水を払いのけるしぐさをした。

 しかし、何度も繰り返すうちに歩行速度も潜り方も上手になった。時計を見ると、もうすぐ3時休憩だった。
 休憩前の最後に、ゴーグルをつけビート板を使って、顔を水につけながら泳ぐ練習をすることにした。すると、午前中よりもかなり速く25メートルプールを往復できるようになっていた。
 絵里子も先輩もかなりの手ごたえを感じ始めていた。ビート板を使うという条件付きであっても、「着衣水泳」をしていることには変わりない。ましてや、絵里子は泳ぎにくい衣装の代表例ともいえるスーツ着用だ。かなづちの状態でこの体験入部に参加したことを考えれば大きな進歩であった。

 ③へと続く

2016年8月 6日 (土)

着衣水泳部への体験入部①

 いよいよ待ちに待った着衣水泳部への体験入部の日がやってきた。
 絵里子は、スーツケースにライトグレーと濃紺のスーツ、ブラウスや下着などを皺にならないようにきれいに詰め込んだ。帰宅時に着用するための私服を持っていこうとしたが、荷物になるのでやめた。ライトグレーか濃紺のどちらかのスーツが濡れずに済むだろうから、そのどちらかで帰ってくれば良いと考えた。

 ~ 中略 ~

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 集合場所にいくと、まばらに人が集まっていた。せわしく動き、入部希望者と話してメモを取っている女子学生が、先日、絵里子の電話に出た着衣水泳部の部長だとすぐに分かった。参加者は男女合わせて10名ほどだった。部長が絵里子の存在に気が付くと近づいてきて、名前や着替えの着数などを確認した。

 周囲を見渡すと意外にも参加者のほとんどが女子だった。男子は上級生の部員が2名だ。
 女子はセーラー服などの女子高生制服やらアニメのコスプレ、マキシスカートなど、到底これからプールに入るとは思えない恰好ばかりだ。絵里子にいたっては黒の2釦スーツ。このスーツは大学の入学式で1回着用し、クリーニングに出してクローゼットに入れておいたものだ。新品同様で皺ひとつなかった。
 絵里子は、自分のスーツに視線を落とすと、後悔の念が少しだけ湧き上がってきた。・・・・・実家に行ってタンスの肥やしになっている高校時代や中学時代の制服とかテニス部時代のユニフォームを持って来ればよかったと・・・。

 まもなく、メイド服姿の部長が説明をはじめた。
 「参加者の皆さん、では、キャンパス内の室内プールに移動して、早速ですが、着衣水泳をはじめたいと思います。プールに着いたらロッカーに着替えなどの荷物を入れて、プールサイドに集合してください。着替えはもちろん持ってきているでしょうから、今着ている服のまま迅速に集合してくださいね!」

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 授業がなく閑散としているキャンパス内を歩きながら、絵里子は自分が今着ているスーツの運命を悟った。プールに着くと、荷物を整え、部長の言葉通りプールサイドに行った。


 「では、皆さん、まずは準備体操を十分にしてから入水してくださいね。室内プールですけど、ここは温水ではなく冷たいので注意してください。」

 絵里子は入念に準備体操をして体を温めた。体験入部参加者達は、キャーといいながらも楽しそうにプールサイドに座って水を自分に向かってかけ始めた。水は想像以上に冷たく、体が慣れるまでに時間がかかりそうだった。絵里子はスーツに向かって水をかけた。
 「行きます!」
 とセーラー服を着た参加者が突然プールに飛び込んだ。水しぶきが絵里子や他の参加者にも飛び散った。後に続けといわんばかりに、次々に参加者達はプールに入っていく。絵里子は出遅れていた。自分で決めたこととはいえ、スーツ姿でいることにためらいを感じていたのだ。
 しかし、ここまできて引き返すわけにはいかないことはわかっていた。「着衣水泳」という未知なる経験・・・・今日という日を密かに楽しみにしていたのも事実だった。自分の気持ちだけはごまかすことはできない。

 絵里子は意を決すると、ゆっくりとプールに入っていった。スカートからジャケット、ブラウスへと徐々に水に浸かっていく。いきなり水圧で体が締め付けられるような感覚に襲われた。何とも言えない感覚だった。
 かなづちの絵里子はただ、プールの中を歩き回るだけだった。その様子を見た上級生の男子部員の一人が近寄ってきた。
 「泳げないの?」
 「あっ、はい、すみません。」
 「ただ水に浸かっているだけじゃつまらないでしょ。犬かきでも何でもいいからチャレンジしてみない?(笑)」
 「犬かきもできないかも・・・。」
 絵里子はもがきながら進むことを試みた。しかし、その姿は泳いでいるというよりは、溺れているといった方が適切だった。みかねた、彼はビート板を差し出した。
 「これを使ってみようか。腕をまっすぐ伸ばしてその下にこれを入れてみて。脇の下奥深くまでね。それで、力を抜いてお尻を浮かすように意識してみて。」

 絵里子は言われたとおりにしているつもりだが、なかなか上手く浮き上がることができない。バタ足しても足が水中に沈んだままだった。しかし、彼の的確なアドバイスのおかげで、ビート板を使えば泳げるようになった。
 ただ、まだ完全に水への恐怖心が除かれたわけではなかった。スーツを着たまま、素潜りをしたり、水中歩行をしたりと少しずつ水に慣れていくことにした。

 ②へと続く