着衣水泳部への体験入部③
午後3時の休憩後、参加者たちは新たな服に着替えてプールサイドに集合した。
絵里子は、なんと帰宅時用にと持ってきたはずの濃紺リクルートスーツ姿だ。後先の事を全く考えていない。絵里子はすでに、着衣水泳というか、服のままずぶ濡れになっていくという行為の何とも言えない楽しさに目覚め、その虜になっていたのであった。
絵里子はたまたま持ってきていた水風船を先輩に差し出し、プールサイドで遊ぶことを申し出た。
先輩はそのことを快諾したが、「着衣水泳部」の成員である以上、心の中には悪だくみを抱いていた。水をかなり含ませ今にも割れそうなほどに限界ギリギリまで膨らませた水風船を使って、絵里子の望み通りプールサイドでキャッチボールを始めた。
なかなか割れず、二人の間に退屈感が漂い始めたころ、先輩が絵里子に細工を施した。絵里子は素直に受け入れた。
次の瞬間から先輩が絵里子に投げる水風船は、かなりの確率で割れだし、たくさんの水が絵里子の濃紺スーツにかかる。何度も繰り返されるうちに、絵里子のスーツの前面はジャケットもタイトスカートもずぶ濡れで、水はブラウスはもちろんのこと、下着にもしみこみ始めていた。裾からは水がしたたり落ちる。
しかし、絵里子は意外にも笑顔で、自分が置かれている状況を楽しんでいるようであった。
水風船を使い果たすと、プールサイドには水風船が割れた残骸と、ずぶ濡れとなったスーツ姿の絵里子が存在しているだけであった。
「(これだけ濡れたらプールに入ったのと変わりないわ)」
と絵里子は内心思っていた。
「絵里子ちゃん、そんな濡れちゃったんだから、いっそのこと泳ごうよ。」
「あっ、はい・・・そうですよね・・・。」
先輩は思惑通り自分の悪だくみが実現し、しかも、かわいい新入女子学生に対する支配感を味わっていた。
否。
実は、これは絵里子が先輩をこのように誘導しただけであった。そもそも「水風船」を用意したのは絵里子だ。
絵里子はこの体験入部を通して偶然にも「服のまま濡れる」という行為に快感を覚えたものの、その行為に至るまでは、自発的というよりも、受動的、あるいは偶発的、つまり自分だけの判断によるものではない過程で実現されることの方により興味を持ち始めていたのだった。
絵里子はプールに入り、あたかも先輩に操られているかのように(実は、逆に絵里子が先輩を操っているのだが・・・)、「従順に」ビート板を使って泳いだり、何度も水中にもぐったりしながら、わざとスカートがめくれ上がるようにし、先輩の目をひくように大胆に振舞い続けた。
この体験入部に持参したスーツ3着は全てずぶ濡れとなった。いずれかのスーツを着て帰宅の途につかなくてはならなくなった代償を払う代わりに、新たな「楽しみ」を見つけ、充実した思いをかみしめていた。
すでに、絵里子の中では、着衣水泳部への入部は確定的であった。この世界にいざなわれた絵里子の行く末は誰も知る由はない。
終わり
>がっくん さんへ
どうもありがとうございます。
もう少しお待ちくださいね!
投稿: OLS管理人 | 2016年10月31日 (月) 19:59
私はやっぱり水中よりもこういうのが良いです。
発売を楽しみにしておりますよ!!
投稿: がっくん | 2016年10月30日 (日) 01:37