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カテゴリ「メッシー・ストーリー」の69件の記事 Feed

2009年8月31日 (月)

教育実習生(4)・・・実習初日【帰宅編】

 制服姿の数名の女子生徒とスーツ姿の絵里子はずぶ濡れの状態でしゃがみ込んで、頭を下げて、できるだけ低い姿勢を保とうとしている。濡れてしまったのは仕方ないが、泥で汚れたくはないと思っているのだろう。
 しかし、さっきよりも大きな雷音が何度も轟き雷光が走ると、さすがに身の危険を感じたのであろうか・・・、無意識のうちにみんなグランドにうつ伏せになった。放心状態でそのまま静かにして身を守っている。背中には雨が降り注ぐ。

 しばらくすると、雷が鳴りやみ、雨量も一時的にではあるが少なくなった。今とばかりにみんな、必死に走りだして校舎内へと逃げ入った。そして、着ている服の前面が泥だらけになった姿をお互いに見回している。中には制服である紺のプリーツスカートと純白の半袖ブラウスを泥だらけにして泣いている女子生徒もいる。おそらくは、恐怖から解放されたという安堵感と、泥だらけになってしまった制服の悲しさ・・・その両方からひき起こされたのだろう。
 
 絵里子も本当は泣きたい気分だった。しかし、生徒達の前ではさすがに泣くわけにはいかない。
 昨晩、両親からプレゼントされ、今朝おろしたばかりのグレーのスーツ。朝、家を出たときは皺一つなくあれだけ綺麗だったスーツが、今は全身ずぶ濡れで、前面はジャケットもスカートも泥だらけ。まるでぬかるみの上でヘッドスライディングでもしたようだ。
 けっこうな時間、ぬかるみの上でうつ伏していたせいもあって、ジャケットの生地に泥が染み込みインナーの白の開襟ブラウスまでも茶色く染まっていた。もう頭の中が真っ白だ。おろし立てのスーツが一日にして台無しである・・・。

 【 避難訓練 】も終わり、再び帰宅の途へとつく絵里子。先ほどと同じスーツを着ているとは思えないほど、変わり果てたスーツ姿となってグラウンドの脇を歩いて校門から出ていった。
 田舎町で人通りが少ないのが幸いで、泥だらけのスーツ姿を見られないで済んでいるのが不幸中の幸いだと感じていた。
 1,2分歩いたところに、昔は公園だったが今は更地となっている所へきた。今朝、学校へ行く時に気がついた場所である。更地とはいえ造営中ということもあり、蛇口がいくつか点在していた。一番近い水道場にいき、そこで絵里子は泥で汚れた部分を洗い流そうとした。辺りを見回すと、雨の中、ここも一面ぬかるみが広がっている。

 この光景を見て、絵里子は不思議な感覚に襲われた・・・。
 心の奥底で、雨に打たれてこうして歩いているのを気持ちよく感じ、さらには、昔よく遊んだこの場所で、子供の時のように泥だらけになって遊んでみたい・・・そんな感覚になっていた。絵里子は自分でもよく分からないが、びしょ濡れになったり、泥だらけになったりすることで快感になるという「古い記憶」が甦ってきたようだ。懐かしい感覚・・・。

 後先のことも考えず、スーツ姿で泥の水たまりに飛び込んでしゃがんでみたり、ぬかるみにうつ伏せになったり、ぐるぐると寝転がってみた。クリームのようにどろどろにぬかるんだ所を見つけては、うつ伏せになってそのまま匍匐前進などもしてみた。子供の頃の懐かしく不思議で気持ちの良い感覚が絵里子を童心に戻らせ、泥んこ遊びに興じさせた。
 同時に冷静な自分もいた。「お父さん、お母さん、スーツをこんなにしちゃってごめんね。でも・・・私・・・・。」と心の中でつぶやいていた。まるで何かに取り憑かれたかのように一心不乱に気が済むまで泥んこ遊びをした。

 今朝、おろし立ての生地の臭いが漂っていたスーツは、今は全身泥でコーティングされ泥の生臭さがする。水道から出る水でまず手を綺麗にした。そして手で掬った水を体のあちこちにかけていった。ホースがあればもっと早く洗い流せるのだが、ホースなどここには無いので地道に手で水を掬って泥汚れを落としていくしかない。帰宅して自分の姿を見れば家にいるはずの母親がびっくりして何か言ってくることは予想できた。びしょ濡れの状態だけなら、「途中で夕立にあって傘が無かったからこうなった」とでも言えるが、泥汚れがあっては説明がややこしくなる。そうならないように絵里子は必死で泥汚れを落とした。

 ジャケットやスカートの後ろ部分はさすがに見えないので、勘にたよって汚れを落とすしかない。それなりの時間をかけ、少なくてもスーツの前面は見事に綺麗になったところで家を目指した。雨はまだ降っているが、傘をささずに心の中で今の状況を楽しみながらゆっくりと歩いていった。
 玄関をあけ、「お母さん、ただいま!」と言うと、家の奥の台所の方から母親の声がした。急いで2階へ上がって自分の部屋に入れば母親に今の姿を見られずに済むと思った。玄関の方に向かってくる気配が無いことを確認すると、絵里子は自分の部屋に駆け込んだ。とりあえずはホッと一安心。しかし、これから一仕事が待っている。
 部屋にあったビニールシートを絨毯の上に急いで広げ、スーツやブラウスをはじめ体に身に付けているもの全てをその上に置いた。やはり、ジャケットの背中部分やスカートのお尻部分や腰辺りにはまだ泥が残っていた。ブラウスは茶色く染みてしまいクリーニングに出しても無理なほどだった。スーツは泥汚れさえ落とせばなんとかなりそうなレベルだった。今晩のうちに風呂場で綺麗にスーツの汚れを洗い流して明日にでも母親が絶対に行かない町外れのクリーニング屋さんに持っていこうと考えた。タオルで体についていた泥汚れを拭き取りバスローブを羽織るとお風呂場へと向かった。

 昔の記憶が呼び覚まされた今、絵里子の今後の教育実習生活にも変化が現れ始めようとしていた・・・。だが、それは潜在意識から突発的に顕在化するものなので、絵里子自身にもこの先、何が起こるのか・・・などまったく知る由もなかった。 ~教育実習生(5)へ続く~

2009年7月23日 (木)

朝露が輝く中で(2)

 雑木林へと足を踏み入れ、小走りでバス停を目指した。雨上がりでもありちょっと蒸して汗ばむ陽気であった。地面はというと当然のことながらぬかるんでいるので、転んだりしたら大変である。足下を見ながらハイヒールを汚さないように、なるべく滑りにくそうな所を選びながら慎重に小走りで進んでいく。20秒ほど経つと背丈の高い雑草が生い茂っているところへときた。葉の上には朝露が光り輝いていたが、その光景の美しさを感受する余裕は今の絵里子には無い。

 腰の辺りまで伸びている草の中を踏み分けながら30秒ほど必至に駆けぬけるとバス停が見えてきた。もう少しである。しかし、草むらを抜け足下に目をやると、再び泥でぬかるんだ地面が現れた。同時に絵里子はとんでもないことに気付く。
 草むらを駆け抜けている時は気が付かなかったが、草葉にのっていた露がタイトスカートに付いて濡れた為に、ライトグレーのタイトスカートが黒く変色していたのである。こんな格好でバスや電車に乗ることを思うと頭の中が真っ白になった。

 ・・・一瞬の油断からであった。頭の中が真っ白になった影響から「注意力」を失った状態で、ぬかるみの上を駆けていたせいもあり、足下が滑り体のバランスを崩してしまう。前のめりになって一度は踏ん張ったものの運悪く水たまりの中に倒れてしまう。大事な研修資料や貴重品類が入ったバックは、条件反射的に水たまりに落ちないように脇の草の上に投げ込んだので無事であった。しかし、ぬかるんだ土壌の上にできた水たまりの中にうつ伏している自分がいた。ただ呆然と目の前の泥水を眺めている・・・。何か大変なことになっている事だけは、かろうじて認識できる状態であった。

Muda01  立ち上がるとジャケットの袖口や、タイトスカートの裾から泥水が滴り落ちている。つい1、2分前に、部屋の鏡に映っていた自分のリクルートスーツ姿の面影はまったくなかった。泥だらけになった自分の姿に目をやると、一気に力が抜けて水たまりの中にお尻をつけて座り込んでしまった。
しばらく、その状態でいたが徐々に自分がどのような状況に置かれているのか理解できてきた。
 冷静さを取り戻し、草の上で濡れも汚れもせず無事のリクルートバックを拾うと外ポケットからハンカチを出して顔や手を綺麗に拭く。そして携帯を取り出し電話をかける・・・。

 「(今日も休んじゃった。このままちょっと遊んじゃおうかしら)」

 今はリクルートスーツ姿の絵里子以外に誰もこの場所にいない。先ほど水たまりの中に転んだときに、冷たく気持ち良い感覚を一瞬味わった。すぐにその感覚は、自分が大変なことになってしまったという思いにとってかわった。しかし、今は、会社に行かないという「開放感」と先ほどの「快感の記憶」が融合し不思議な感情が心の底から沸き上がってくるのであった。

 さっき転んでしまった水たまりの中に、今度は自らの意志でうつ伏せとなり水たまりの底の泥に体をあずける。リクルートスーツの生地はさらに多くの水と泥を吸収し重くずっしりと絵里子の体を引き締めていく。仰向けになってみたり、何度も転がったりしながらリクルートスーツを泥だらけにしながら一人無邪気に遊んでいる。
 
 朝露が綺麗に輝く中、WET&MESSYの世界にいざなわれた女性が、今ここに、また一人誕生した瞬間である
(完)

2009年7月15日 (水)

朝露が輝く中で(1)

 絵里子は高熱がなかなか下がらず会社を火曜日から3日も休んでいる。リクルートスーツを毎日着込んで頑張っている新入社員研修がハードなこともありここにきて一気に疲れが出てきたらしい。昨晩、会社から連絡があり、研修が遅れると業務等に支障もでてくるので、熱が下がったらちょっと無理をしてでも出てくるようにと「鬼上司」から言われていた。

 今朝になってようやく熱が下がったものの気分が悪かった。今日は金曜日ということもあり、今日も休んで月曜日から出社したいというのが本音であった。しかし、いつまでも学生気分ではいられないし、さすがに他の同期の仲間達に遅れをとるのも嫌である。さらに、今日も休めば「鬼上司」から何を言われるかわからない。社内でもはばを効かしているお局ということもあり、目を付けられないようにしているのが無難であろう。

 絵里子は出社することにし、寝込んでいたせいか重たい体に鞭打ってベットから起き上がるとシャワーを浴びに浴室に行った。昨晩まで寝込んでいたためお風呂に入っていなかったので念入りに体と髪を洗った。
1  浴室から出ると髪を乾かし化粧をし、ヘアスタイルを整えた。そして、下着を身につけパンストを履きライトグレーのリクルートスーツを着込んでいく。学生時代、就職活動前に親から黒のリクルートスーツは買ってもらいそれで就職活動をなんとか乗り切った。しかし、社会人になってから研修等で毎日スーツを着用する事が義務であるため「替え」のスーツが必要であった。少しずつ買い足していく必要がありそうだが、とりあえず2着目のリクルートスーツとして自分のおこづかい
で最近購入したものである。
 このスーツは、月曜日に出社した時に着たもので今週ずっと着用する予定のものだった。今週は1度しか着ていないこともあってタイトスカートにもジャケットにもそれほど皺がついていなかった。いつもの金曜ならスカートはけっこう深い座り皺がいっぱいできているのだが、今日は金曜日であるにも関わらず綺麗な状態のスーツを着れる事に「ささやかな喜び」を感じた。
 
 白の開襟ブラウスを両手に通すとキッチンに向かい、オーブンに食パンを1枚入れ、コーヒーメーカーのスイッチをオンにすると冷蔵庫からマーガリンとヨーグルトを出した。そして、リクルートスーツを着るために部屋に戻りブラウスのボタンをとめる。次にタイトスカートを履き、スリットが真後ろにちゃんときていることを鏡で確認すると最後にジャケットを着る。最近のメインストリームであるシングルの2ボタンジャケットだ。ちょっと奮発してオーダーメイドスーツにしたこともあり、絵里子の体にピッタリとフィットしていて美しいシルエットだ。

 ジャケットのボタンをとめキッチンに行くと、思惑通り食パンとコーヒーがちょうど出来上がっていたところだった。食パンにマーガリンとコンデンスミルクを塗り、ガラスの容器に大さじ5杯程度のヨーグルトを盛る。食パンをくわえながらキッチンの窓から外を眺めると日が照っているが道路が濡れている事が確認できた。明け方まで雨が降っていたらしい。庭の芝生がまだたくさんの水分を蓄えている。家の近くの雑木林に生えている雑草や草花、背丈の高い草木の上では朝露が光り輝いていた。
 
 朝食を済ませると、鏡の前にもう一度立って自分のスーツ姿とヘアースタイルを確認する。最後にお気に入りのブランドの香水を首筋と両手首に軽くかけるとバックの中に研修用資料が入っているかを確認した。4日ぶりの通勤であるが1週間以上も会社に行っていないような感覚だった。それだけ、風邪で休む前までの日々が忙しく、また単調で時間の経過を早く感じていたのだろう。

2  玄関を出るといつものようにバス停へと急ぎ足で歩いていく。先ほどキッチンの窓から外を見た時に気がついた通り、辺りの路面は濡れていて草木もまだ乾いていない。
 ふと時計に目をやると・・・「あっ、嫌だ、あと2分しかない。間に合わない!」と心の中で叫ぶ。家を出て小走りでバス停まで普段なら5,6分かかる。本気で走っても間に合うかどうか微妙なところである。でも、工事で造営中の雑木林を突っ切って行けば迂回せずに一直線なので小走りでも1分ちょっとあれば間に合う程の近道だ。ただ造営中で足場が泥であるという事と、背丈の高い雑草を踏み分けていく必要のあるエリアがあった。おまけに、今日は雨上がりで足場はひどくぬかるんでいることだろう。

3  この近道はあまり使いたくないので、本当に急いでいる時にしか通らないことにしている。数ヶ月に1回通るかどうかの頻度だ。いくら急いでいても雨の日は絶対に通れない。通ったら大変なことになってしまう。
 今日は、雨ではなく晴れているとはいえ、雨上がりということもあってリクルートスーツを着た状態では通りたくないのが本音だ。しかし、会社に遅刻して「鬼上司」に叱られるよりは、まだましであると絵里子は判断し、迷わず工事中の雑木林へと足を踏み入れるのであった・・・。 
~(2)へ続く~

2009年6月25日 (木)

農業にあこがれて・・・(4)

 ぬかるみの上にしゃがみこんで小休止をとっている絵里子は、タイトスカートのお尻の表地と裏地が徐々に泥水で湿ってくるのを感じていた。体験したことのない気持ち悪さであった。その気持ち悪さは、同時に、スカートにべったりと泥が付いてしまったことを意味するが、吹っ切れている彼女にとっては、汚れの事はもはや気にならない。

 やがて、小休止終了の合図があり、再度田植えの開始である。どうやらこのターンで田植えは終わりとのことであった。田植えの作業は想像以上の重労働で体力をつかうため、参加者はみんな汗だくになり疲れはじめていた。絵里子もリクルートスーツ着用で作業をしていて、動きずらいタイトスカート姿に、暑い中ジャケットまで着込んでいたためかなり体力を消耗している。黒のタイトスカートのお尻部分と、裾の部分が泥でべったりと汚れている。灰色っぽい色なので汚れがよく目立つ。

 ・・・ついに、田植えの作業が終わった。重労働からの解放感から思わず田んぼの中で膝立ちをしてしまう。そしてそのままお尻をついて座り込んでしまった。泥の柔らかく生温かい何ともいえない感触が絵里子のお尻に伝わってくる。先ほど小休止の時にぬかるみに座っていたときとは違って気持ち良いという不思議な感覚に誘われていた。
 就職活動用に1着しか持っていない、この黒のリクルートスーツ。今朝、家を出るときは、クリーニングを終えた状態で綺麗な状態だったのに、今はスカートの後ろと、ジャケットとブラウスの袖口辺りが泥だらけである。

 田植えも終わり、体験会も終わりに近づいている。
参加者は水田から上がると、参加者全員が順番に体験会参加の感想を一言ずつ発表することになっていた。そして、発表し終わると、恒例のイベントの開始である。強制ではないが、発表し終わった人は自ら休耕田に飛び込んで泥まみれになって参加者同士ではしゃぎ合うのである。大人が童心に戻って泥んこ遊びをするなんて、なかなか出来ない経験である。

 絵里子の発表の順番は最後の方であった。彼女の前の人達まではみんな感想を述べた後に田んぼに飛び込んでいる。強制参加ではないが、さすがにみんな飛び込んでいる中、自分一人だけ飛び込まなくては興ざめであろうと感じていた。みんな泥まみれになって田んぼの中から絵里子の発表とその後の行動に注目している様子であった。

 スカートが汚れた時点で吹っ切れていた絵里子ではあったが、さすがに田んぼに飛び込んだらどんな事になるかは分かっていた。でも、今さっき、水田の中でお尻をついてしゃがみ込んだときの何とも言えない気持ちよい泥の感覚を思い出した。飛び込んでうつ伏せになって泥の感触を感じながら田んぼの中を這ってみたい気分にも襲われて心の中では葛藤していた。そんな葛藤を抱きながら、淡々と参加者の前で発表を行っている。そして、ついにその瞬間がきた。最後の下りを述べながらも、彼女の心の中は決まっていた。


 「ちょっと訳があってリクルートスーツで田植えに参加しちゃったのですが(笑)、これも多分、私が農業に身を捧げるための必然性だったのかなと・・・。この1着しかもっていないリクルートスーツを田んぼに捧げたいと思います!」

 「バシャーン・・・」 参加者達にとっても意外な事だったのだろうか。一瞬の沈黙が会場を包み込む。

 黒いリクルートスーツは一瞬にして泥だらけである、泥まみれの参加者の中でも一際、笑顔で気持ちよさそうに田んぼの中を這って進む絵里子の姿は目立っていた。他の参加者から泥を投げつけられたり、男性参加者達に捕まって両手足を持ち上げられ、田んぼの中に何度も投げ込まれたりもした。
 もうリクルートスーツの面影は全くない。どこからがジャケットで、どこからがタイトスカートなのかの区別も付きにくいほど泥で汚れていた。泥まみれになることがこんなにも楽しくて気持ち良いものなのかと絵里子は至福の中にいた。 
(完)

2009年6月16日 (火)

農業にあこがれて・・・(3)

 いよいよ田植えの体験会が行われる場所へと参加者一行は到着した。みんな着替えていて汚れてもいいような格好だが、絵里子だけは「リクルートスーツ」を着ていて一人ういている。参加者はそれぞれ水稲を数十くらいずつ受け取けとると、ゆっくりと田んぼに足を踏み入れていく。ほとんどの人が初体験のようで泥の感触に「きゃー」「うわー」などとといった叫び声をあげる。

 絵里子も水田の脇でパンプスを脱ぎジャケットとブラウスの袖をまくった。スカートもウエスト部分を1,2回巻き上げて丈を少し短めにした。膝上5センチと言ったところか。パンストは先ほど荷物を預けてくる際に脱いできたので裸足姿である。
 参加者の中には足を切ったりしないようにと足袋や長靴を履いている者もいたが、ほとんどの人が裸足のようであった。それにしても
リクルートスーツ姿で田植えとは・・・異様な光景で一人目立っている。準備が整うと、絵里子は滑らないように、おそるおそる田んぼの中へと入っていく。すぐに泥のあたたかさが足に伝わり、一瞬何ともいえない気分に襲われる。

 参加者はまず横一列に並んだ。主催者の「始め!」の合図と共に田植えの開始である。絵里子は両隣の人達が移動する際に上がる泥はねに気を付けながら丁寧に苗を植えていく。苗を持った手を泥の中に入れていくので右手は指先から手首の少し上あたりまで泥だらけだ。田植えは中腰の状態でしなくてはならず、普段そのような体勢をしたことがない絵里子にとってはかなりきつい。曇りでそれほど暑い陽気ではないものの思った以上に体力を使うためか、絵里子は次第に汗ばんできて、やがて額からは汗が滴り落ちてくるようになった。ブラが見えないようにとブラウスの上にジャケットを着ているせいもあって、かなりの汗をかいている。

やがて、参加者一同は田んぼの反対側まで田植えを終え、いったん小休止となった。中には疲れたために、ぬかるんでいる田んぼの脇の上であるにも関わらず、ためらいもなく座って休んでいる者もいる。絵里子も腰が痛く足もガクガクなので本当はしゃがんで休みたいところだが、リクルートスーツを着ている故、そういうわけにはいかない。スーツを汚さないように立って休んでいる。

 再び、主催者の合図と共に先ほど苗を植えたところよりも少しずれたところに一列に並んだ。そしてさっきと同じように苗を植えていく。絵里子は汗がジャケットに滴り落ちるようになり、ブラウスは汗でびっしょりと濡れ始め、なんとも言えない気持ち悪さを感じていた。集中力を徐々に失い暑さと疲れでふらふらしてきた。いっそのこと水田の上にそのまましゃがみ込んでしまいたいという誘惑に襲われるが、まだ理性が働いている。

 しかし、中腰の体勢でいるとタイトスカートが少しずづずれ落ちてきた。すそが膝よりもしたした位置まで下がってきてしまった。しばらく絵里子は気づかなかったが、ふと自分の下半身に目をやると、タイトスカートのすそが水田の水面ギリギリのところにあった。思わず右手でスカートをたくし上げた。
 「あっ!」と声を上げたが遅かった。苗を水田に入れ泥だらけの手でスカートをもっているということが何を意味するのかは、暑さでふらふらしている彼女にも容易に理解できた。

 いったん汚れてしまうと、吹っ切れるものである。さっきまで汚れないようにスカートやジャケットをかばっていたのが何のためだったのか自分でも分からなくなってくる。どうせ、汚れても水で一時的に汚れを落として、明日クリーニングに出せばいいやと思うとスカートの後ろのすそが水田の上に広がって汚れていくのも全く気にならなくなっていた。次の小休止の時には田んぼの脇でお尻をつけてしゃがみ込んだ。ちょっとぬかるんでいたが、もう今となってはたいした問題ではなかった。 
~(4)へ続く~

2009年6月 4日 (木)

農業にあこがれて・・・(2)

 絵里子は、改札を出ると「農業体験会」の受付書の裏に印刷された地図を頼りに会場へと小走りで向かう。まもなくジャージ姿の中年男性や、ハーフパンツ姿の若い女性や短パン姿の少年らが集まっている空き地が見えた。総勢20名といったところか。一人だけスーツ姿の若い男性がいた。自分だけじゃなくてよかったと、内心ほっとしていた。

 その男性は絵里子の姿を見るなり、
 「あと、5,6分で始まりますから急いで着替えてきて下さい。更衣室はありませんが、本日ご協力いただく農家の1階が女性の着替え所になっておりまして・・・・。


 この男性が主催会社のスタッフだからスーツを着ているという事に気付くと、絵里子は再び不安になった。しかし、後戻りもできない今となっては・・・彼女は男性の説明を遮って
 「・・・着替えは無いんです。荷物だけ預けさせていただければ・・・。」
 「あの・・・その格好で参加されるのですか?」
 「はい、ちょっと、色々ありまして、着替え持ってくるの忘れてしまったのです。汚れないように気を付けるので大丈夫です。この格好では駄目ですか?」
 「い、いや、駄目ではありませんが、
汚れてしまったりしてもこちらでは・・・責任を負えませんし・・・・
 「はい、承知しております。」

 荷物を預けて集合場所に戻ると、絵里子は参加者の視線を一斉に浴びる。それもそのはず、リクルートスーツ姿で会場にいるからだ。落ち着かない様子で視線を落としていると、開始時間になったため、主催者のスーツの男性が農業体験会の説明を始める。注意事項や、体験会の流れ、終了予定時間などについて一通りの説明がし終わると、いよいよ田植えの体験を行う田地へと歩いていく。
 途中、
向こうから小学生達や、絵里子と同じくらいの年齢の男女グループや、中年の夫婦達とすれ違う。見ると、なぜか全身泥だらけの人もいる。下半身のキュロットスカートが全部泥で汚れていて元の色が分からないほどの女性もいる。すれ違うときに聞こえてきた話しからすると、どうやら農業体験会の1部に参加した人達らしい。

 絵里子は、田植えで、あんなに汚れるものだろうかと不思議に感じた。でも、もし普通に作業していても、あれほどまでに汚れることになるんだったら大変・・・・と不安になった。気になってスタッフに聞いてみる。
 田植えでは、足をとられて転んだりしない限り
汚れはしないとのこと。ではなぜ、すれ違った人達が泥だらけなのか尋ねると、最後のオリエンテーションで体験会の感想をみんなの前で発表した後に、田んぼにダイビングしたり、参加同士で泥をかけあったりする人達もいるからなのだという。でも強制ではないし、汚れたくなければ何もする必要ないし、ましてやスーツ姿であれば誰もわざと汚してきたりはしないだろうとの事だった。

 そうは説明されても絵里子は少し不安で、嫌な予感が頭をよぎるのであった。 
~(3)へ続く~

2009年5月27日 (水)

農業にあこがれて・・・(1)

 農業自給率40%、農家の後継者不足、休作地の増大・・・未来の日本の食糧事情に暗い影を落としている要因がいくつもある現在、農業に注目する女子大生もいる。
 つい最近まで一般企業への就職を目指し、オフィス街を歩き回る生活をしていた絵里子。しかし、途中から一般企業への就職ではなく、将来を見越して農業関連企業への就職へと希望先を変更する。農業に関係するのであれば、会社組織でなく農家へ見習いという形で就職することも視野に入れている。先日もリクルートスーツを着込んで農協共同組合や農家を尋ねてきたところであり気合いも十分だ。

 ある日、絵里子は某企業主催の「農業体験会」というチラシを大学の廊下の掲示板で見つける。田植えの準備が整った田地を使用しての田植えの基礎を半日
がかりで学ぶ体験会とのことだった。会の最後には参加者達によるオリエンテーションが催されるとのことだった。楽しそうな体験会だなと絵里子は思った。
 農業にたずさわる事に最近興味を持ち始めたものの、今まで農業体験など全くない彼女は、これはよい機会だと考え、早速、体験会に応募することにした。当日は1部と2部の2回実施されるようだったが、午後からの2部に申し込んだ。

 体験会の当日は日曜日だった。就職活動中の今も、日曜日は面接さえなければ説明会やセミナーなどには参加しないこととし、ゆっくり体を休める事に決めていた。普段の日曜日なら、ゆっくりベットの中で昼までうずくまっていられるので、つい・・・その癖が出てしまった。「あっ、今日は体験会に参加するんだった!」と突如思いだした絵里子はとび起きる。まだ何とか開始時間までには間に合いそうだ。慌てて身支度をする。
 当然、朝食は抜くこととなりすばやく化粧を終えると、条件反射的に『いつものように』着替えを済ませる。そして長めの黒髪を後ろで結び、最後に肌色のパンストを履いた。体験会の受付書や筆記用具、貴重品などをバックに詰め込むと急いで家を出る。そして、コツコツと音を立てながらアスファルトの小道を駆けていく。真夏なら汗びっしょりであろうが、今日は日差しはあるものの、それほど湿度は高くなく多少汗ばむ程度であった。なんとか、体験会の開始時間に間に合う電車に乗ることが出来た。

 ほっとするのもつかの間、トンネルの中で窓に映った自分の姿を見て絵里子は青ざめる。「あっ!(やだ、私・・・いつもの感覚でリクルートスーツに着替えちゃってるじゃない・・・。こんな格好で田植えなんかしたら汚れちゃうよ。)」と思わず声を発してしまう。満員電車の中、彼女の前に座っていた人はもちろん、周りの数名が何事かと彼女の方を振り向く。何でもないことに気付くと皆一様に視線を戻すが、彼女の頭の中は真っ白だった。たしか、体験会の受付書にも、『作業等で服が汚れた場合に備えて着替えを持ってきてください』と書いてあったことを思いだす。
 彼女は自分がきている黒のリクルートスーツに目をやる。「(この一着しかないリクルートスーツ。もし汚れちゃったらどうしよう・・・・。でも、今日の体験会はぜひとも参加したいし・・・・。汚れないように注意して作業すればいいわけだし、もし汚れてしまっても、ちょっとくらいなら水で汚れを落として、明日にでもクリーニングに出せばいいよね・・・。でも、やっぱり、こんな格好じゃ落ち着いて作業できないだろうし・・・。)」 ・・・・・と、彼女の心の中は葛藤していた。

 頭の中で色々考えている内に、最寄り駅についてしまう。まだ彼女はこのリクルートスーツ姿で参加するか否か迷っているが、とりあえず、この駅で降りなくてはならない。時間的な余裕もない中、早く決断しなくてはならない。なんでこんな格好で来てしまったのかと自分で自分に腹が立ってきて、頭の中は混乱している。
 「(えい、もうどうにでもなれ!)」と彼女は駅の自動改札を抜けて、地図を見ながら体験会が行われる会場へと向かい始めた。 
~(2)へ続く~

2009年5月 6日 (水)

就活女子大生:ストレス解消法(1)

 不況の煽りを受け、就職活動中の女子大生にとって内定をとるのは容易なことではない。たとえ、内定をもらったとしても取り消される事すらあるという不安な世の中である。こんな時代にリクルートスーツを着て、日々就職活動をしている女子大生達はどのような気持ちでいるのだろうか。
 先行きの不安と就職活動による精神的・肉体的疲労、思い通りに行かない面接。悩めば悩むほど憂鬱になりストレスはたまる一方だ。なんとか自制心で精神性を保つことができればよいが、ストレスに押しつぶされて鬱状態へ陥っていく女子大生も大勢いることだろう。

 絵里子は、ある日、目的もなくただ何となく昼間の公園を歩いている。第一志望の会社の面接帰りで・・・・今日の面接で上手く受け答え出来なかったことを悔やんでいる。この屈託とした気持ちを思いっきり晴らすべくなにかストレス解消をしなくては、おかしくなりそうだと感じていた。

Koganezaki1  公園内のグラウンドを歩いていると急にフラフラめまいがし、たまらずその場に座ってしまう。黒いリクルートスーツのスカートのお尻部分が土埃で白く汚れてしまっているが、絵里子には分からない。
溜まったストレスと就職活動の行き先の不安が彼女をおかしくさせてしまう・・・。不思議な衝動が彼女を襲う。「リクルートスーツを着たまま汚れてみたい・・・・」と。
  リクルートスーツ姿のままグラウンドのど真中で寝転がり仰向けになって空を見上げると、日の光が目に入り眩しい。こんどはうつ伏せになってみる。ジャケットが砂埃で汚れているのがはっきりと見てとれる。きっとスーツの後ろもひどく汚れているのだろうと想像すると、なんともいえない不思議な感覚に包まれる・・・。そして、その場で
匍匐前進を開始する。全身土埃で真っ白だ。このままでは帰れない。汚れを落とさなくては・・・。

Koganezaki2   絵里子は汚れたリクルートスーツを綺麗にするため、公園からすぐの海岸に向かう。リクルートスーツ姿のまま海の中に入っていき汚れを落とす。まだ夏前なので海水はそれほど温かくないので全身海水に浸るわけにはいかない。腰辺りの深さの所まで入っていきスカートとジャケットの胸やお腹辺りに付いた汚れを綺麗に落とす。 
 オーダーメイドの黒のリクルートスーツを公園で汚し、今は
荒波にもまれてびしょ濡れになっている・・・。スーツは私服以上に注意して着用し、濡らしたり汚したりしないように気を付けるのが普通だ。だからこそ、リクルートスーツ姿のままでこんなことしている自分に快感を感じている。やめつきになりそうだ。

 海の中で水と戯れていると不思議と彼女は活力と悦びが湧き上がってくるのを感じていた。この快感を再び味わいたいと願った。最高のストレス解消法かもしれない。でも、今度来るときは内定を決めてからにしようと心に決めた。自分へのご褒美として・・・。 ~(2)に続く~

2009年5月 3日 (日)

某組織入隊志願の女子大生

Mud01a_2  某組織入隊志願者には男女問わす体力と勇気が要求される。選考の中には実際にさまざまな体力測定検査があるという。選考はスーツ着用が義務で、なぜか着替えを持ってくることが条件になっているらしく、着替えを忘れた者は選考試験を受けさせてもらえない。

 その選考は、毎年必ず屋外で行われ、組織の日程の都合上、雨天決行である。匍匐前進は必ず実施される試験内容と言われており、実施日によっては雨上がりの翌日の場合もある。そうした日にあたってしまった志願者は、ぬかるみの泥んこの中で匍匐前進しなくてはならない。絵里子はまさにその一人。黒や濃紺、チャコールグレーといったシックな色合いのリクルートスーツ姿の女性志願者達が集まっている。絵里子は、先週購入したばかりで、まだ試着しかしていないやや明るめのグレーのリクルートスーツを着ている。

 選考会場で、試験内容を言い渡されると、大抵の受験生はとまどうらしい。リクルートスーツのままというのが条件で勇気や決断力も試されているのだ。着替えを持ってくることになっているのは、このためであるが、事前に志願者には通知されない。

Mud02b  最初はためらうが・・・入隊の意志が堅い志願者は、意を決してぬかるみにうつぶせになる。絵里子は、今日の選考のために購入したおろし立てのリクルートスーツを泥だらけにしながら・・・ゆっくりと匍匐前進を開始する(途中、何度か立って敬礼をしたりする)

Mud03  選考試験が終わると、泥まみれのリクルートスーツから私服へと着替える。その間に厳正なる審査が行われている。シャワーを済ませ、着替え終わり試験実施場所へと集合し、その場で合否結果が伝えられる。

 「不合格」の者の中には、再試験を志願するものもいるらしい。絵里子もその一人であった・・・。着替えたばかりの服のまま、ぬかるみの上を再び匍匐前進する。着替えはもうないのに・・・・さっきよりも勢いよくぬかるみの中をはって進み、全身泥まみれになっていく。 (完)

 ※お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、このストーリーは数年前に映像化し、DVD作品として発表しております。→ 商品説明  サンプル動画