絵里子は就職活動の面接の帰りに「いつものプール」に行って友達とストレス発散をしようとしていた。「着衣水泳」など、リクルートスーツのままずぶ濡れになって遊ぶことの楽しさ・気持ちの良さを一緒に分かち合える仲であった。
風が吹くと若干肌寒く感じるので、絵里子はリクルートスーツの上にコートを羽織っていた。プールの水温が冷たくないかと気になったが、スーツのままプールに入っている間は寒くないことを知っていたのであまり気にはならなかった。
一緒に遊ぶ友達は「いつものプール」で待っているとのことなので、面接が終わると絵里子は急いだ。プールに到着すると、プールサイドにリクルートスーツ姿の友達がツイスターゲームの準備をしていた。
「何、これ?」
「何って、見ての通りよ。」
「一緒にプールで着衣水泳とかして水遊びするんじゃないの?」
「そうよ、ツイスターゲームをやって負けた方が罰ゲームで先に一人でプールに入るっていうのはどう?」
絵里子は、なぜか、勝てるという根拠のない自信があった。罰ゲームなんだから、勝って友達にはコートも着てかばんも持ってプールに入ってもらおうと考え、その伏線として友達を挑発した。
「もし負けたら、コートも着てリクルートバックも持って入ることにしようね!」
ルーレットを回し続け、ギブアップするまでに何回ルーレットを回したかで競うことにした。
友人からの番だった。
「(右足赤、左手赤、右手緑・・・・)」
難しいと思われる体勢も意外なほどの身体能力の高さを見せつけながら難なくクリアし続けた。ルーレットを23回も回したところでギブアップした。
次は絵里子だ。コートを脱いで、軽く準備体操をするとゲームを開始した。23回以上クリアしないとならないというハードルの高さを前にして少し焦りを感じていた。1回、2回・・・・10回、11回・・・と卒なくクリアしていったが、12回目のことだった。
大股に脚を開かなくてはならない状況になった。タイトスカートのため脚を思うように開くことができなくなってしまった。絵里子は力を入れてさらに脚を開こうと試みる。少しずつではあるが右足が一番外側の赤い円の中に届きそうになった。
「(あっとちょっと・・・。)」
と思い、絵里子がほんの数センチだけ、さらに頑張って脚を開いた時であった。
ビリッという鈍い音と共にタイトスカートのスリット部分が裂けてしまった。
「(あっ、嫌だ・・・!)」
と、条件反射的に脚を閉じ、スカートのお尻の方へと手をあてて、破けたスカートの状態を確認した。この瞬間、絵里子の負けが確定した。友達にコートを着てリクルートバックを肩にかけるように促される。携帯や面談資料、書籍、私服の着替えなどバックの中身は全て出して空にした。そして、プールサイドに立った。
「罰ゲーム!罰ゲーム!」
という友達の明るい声が聞こえてくる。
意を決して絵里子はプールの中に入っていく。リクルートスーツのままプールに入ったことは何度もあるが、コートを着てリクルートバックまで持って入るのは今回が初めてであった。自分で言い出したことではあるが、まさか負けてこんな羽目になるとは惨めに感じた。
リクルートスーツをずぶ濡れにすることは前もって分かっていたことであり、着替えも持ってきているので問題ないが、コートやバックまでは濡れることは想定外であった。
絵里子はいわゆる「完全就活スタイル」でプールの中を歩き始めた。しばらくしてプールから上がるとコートやスカートなどから勢いよく水が滴り落ちた。
コートを脱ぎ、バックをプールサイドに置くと再びプールに入った。当然ではあるが先ほどよりも動きやすかった。何度か経験したことのある気持ちの良い感覚であった。着衣水泳をしたり、脱げた靴を潜って拾ったりして一人でプールの中で遊んだ。
水中では意外と衣服に力が加わるのか、絵里子が一旦プールから上がると、スカートのスリット部分の裂け目が先ほどよりも広がっていた。しかし、今となっては絵里子は気にはしなかった。ツイスターゲームで破けた時点で、このスカートはもう履けなくなることを覚悟していたからだ。
プールサイドに座って足をプールの中に入れてくつろいだ。その間、友達がリクルートスーツのままプールに入って気持ちよさそうに泳いでいるのを眺めていた。
しばらくして、疲れてプールから上がってきた友達と入れ替わりに絵里子は再びプールに入った。今度はさらに本格的に泳げるようにと、ジャケットを脱いでもっと動きやすい恰好になった。
平泳ぎを何往復もした。いつもはスカートが足腰を締めつけるので脚を自由に動かせなかった。しかし、今日はスリットが破けていて、脚の可動域が大きくなったせいか脚をおもいっきり開いていつもより推進力を獲得して速く泳ぐことができた。
何往復も泳いでいるとさすがに疲労がたまってきたのでプールサイドに上がろうとした。そして、シャワーを浴びて帰ることにした。
プールから上がると、友達が絵里子に声をかけた。
「絵里子!スカートすごいことになってるよ!」
絵里子は後ろを振り返りスカートの後ろ部分に目をやった。先ほどよりもさらにスリットの裂け目が大きくなっていて、下着が丸見えであった。気の置けない友達の前とはいえ、さすがに絵里子はスリットの両側を手で引き寄せて下着を隠した。
「これじゃ、もう絶対に穿けないじゃない!」
そうつぶやくと、恥ずかしそうにシャワールームへと向かっていった・・・。
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