就活女子大生:着衣入浴への誘い(1)
就職活動を始めて数ヶ月、リクルートスーツ姿にコートを纏う必要がない陽気となった。絵里子はもうすっかり朝の満員電車にも慣れてきた。就職活動をはじめた当初は、面接や説明会のために満員電車に揺られて移動するのは嫌で憂鬱であった。
やがて、電車になんとか無事に乗り込み、狭い空間の中に隙間をみつけ、自分の体の置き場所を確保できた事に喜びを感じるようになった。さらには、面接会場の最寄り駅で人混みをかき分けて無事に電車を降りられた時にはこの上ない幸福感を味わうようになった。なんの変哲もない日常の朝の出来事なのに・・・。
某大学4年生になった絵里子は大学の授業の他に就職活動や新入生のサークル勧誘、家庭教師のアルバイトなどと忙しい。法学部なので卒論はないが、法律専門学校にも通っているため体がいくつ合っても足りない。しかし、これが勉学に勤しむ平均的な法学部の大学生の姿だ。とはいえ、就職活動が佳境にさしかかり、さすがに疲れがたまってきた。
ある日、就職活動の帰りにサークル仲間から呼び出しがかかり、黒のリクルートスーツ姿のまま飲み会に行った。疲れている体に鞭打って、笑顔で新入生の世話をしなくてはならないので、飲み会とはいっても気を遣わなくてはならず、ストレス解消などにはならない。明日は学校も就職活動も何もかも休みなので、帰宅したらすぐにお風呂に入って、気持ちよく昼まで寝てしまおうと心に決めていた。
案の定、飲み会は長引き、絵里子もかなり酔っていた。帰りはサークル仲間達と途中まで電車が一緒で、就職活動の情報交換など雑談していると時間はすぐに経つものである。友達と別れ、最後は絵里子一人で電車に揺られる。周りは酔ったサラリーマンや学生達で騒がしい。
一人になった途端、気が抜けたせいか・・・自分が酔っている事が急に意識されはじめ、徐々に意識が朦朧としてきた。何とか帰宅し、玄関に到着するなりパンプスをだらしなく脱ぎ捨て、リクルートバックを部屋の入り口に無造作に置く。そのままベットに仰向けに倒れ込む・・・。
どのくらい寝たのだろうか。ふとトイレに行きたくなり目覚める。窓の外はまだ真っ暗なので夜明けまでもうすこし時間があるようだ。クローゼットの前を通るとき、鏡に全身がうつしだされた自分のリクルートスーツ姿に驚く。ジャケットも、スカートもしわだらけで、よく見るとスカートの前部や、ジャケットの胸の辺りなど何ヶ所かに小さな白っぽい汚れがついている。黒のスーツだから汚れが目立つ。飲み会の時に付けた汚れだろうか。どこでつけた汚れだろうかと気になった。
昨日、クリーニング仕立てで一糸乱れぬ綺麗なリクルートスーツだったのに・・・。一日しか着ていないのにもうクリーニングに出さないとならないのかと思うと絵里子は多少苛ついた。
トイレに行くとあることを思い出す。帰宅後、そのままベットに倒れ込んだので無理もないが、まだお風呂に入っていなかったのだ。意外と飲んだらしく、頭がガンガンしていて、まだ足下がふらついている。バスタブにお湯をためようとノブをひねると、頭から水を浴びてしまう。・・・そう、レバーがシャワーの方になっていたためだ。 ~(2)へつづく~
















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