友達と一緒に泥んこ遊び・・・ストーリー公開
絵里子は今年の春と初夏に二度もリクルートスーツを泥だらけにして台無しにしてしまった。一度目は面接帰りに大学所有の休耕田にボールが落ちたのをたまたま目撃し、下級生の女子マネージャーの代わりに責任感からリクルートスーツのまま田んぼに入った時であった。
二度目は野球部恒例のイベントで、就職活動組の中で最も早く内定を勝ち取ったということでちょと手荒い祝福を受けた時であった。その時、同級生で内定を部内で絵里子に次ぎ二番目に勝ち取った沙也加は、絵里子がリクルートスーツのまま泥だらけになっていく様子を羨ましそうに眺めていたのであった。しかし、絵里子に先を越されてしまったため彼女はリクルートスーツのまま泥だらけになるという願望を叶えることができず残念に思っていた・・・。
あの恒例イベントからほどなく、沙也加は絵里子に言った。
「今度一緒にあの田んぼで泥んこ遊びしてくれない?」
「(!)えっ?何で?」
「隠さなくてもいいよ絵里子。この前、あのイベントでリクルートスーツのまま泥だらけになった時、楽しそうだったよね。私ね本当は絵里子のようにリクルートスーツのまま泥だらけになりたかったの。でも絵里子が部内で一番に内定もらったから・・・。」
「あの・・・私ね・・・」
沙也加は絵里子の言葉をさえぎった。
「絵里子さ、あの時、嫌がっているようなこと言ったり、みんなに嫌そうな顔してたけど、あれって演技でしょ?本当は嬉しかったんでしょ?私には分かるの・・・。私も服のまま泥だらけになって遊ぶの好きだから。高校時代からなの。終業式のあととか高校のセーラー服を着て泥だらけになって遊んだり、時々、お気に入りのお出かけコーデでそれを泥だらけにしちゃったことも何度もあるのよ。」
「・・・。」
「何も言わなくていいの。周りくどいことは言わないわ。今度の日曜日、お互いお気に入りの服を着てあそこで遊ぼうよ!もうすぐ時期的に涼しくなっちゃうから今しかないよ!」
絵里子は少しの間をおいて沙也加の誘いを快諾し頷いた。
絵里子は自分の心の中を完全に読み取られていたという驚きよりも、自分と同じように服のまま泥だらけになることに喜び感じ理解してくれる人間がいて、しかも泥んこ遊びに自分を誘ってくれるということに感激していた・・・。
日曜日まであと数日しかない。絵里子はどんな服で遊ぼうか考えることが楽しかった。リクルートスーツではなく、今度はお気に入りの私服、泥だらけになったらもう着れなくなるような服で遊ぼうともくろんでいた。
当日、絵里子と沙也加は二人で仲良く例の田んぼへと向かった。絵里子は白い長袖のトップスにベージュの薄手の膝丈プリーツスカートで腰にベルト代わりにリボンを巻いていている。沙也加は淡いピンクのブラウスに白のロング丈フレアスカートだった。二人ともこれから泥んこ遊びをする服装とは思えない。
二人は、どっちがいっぱい泥で服を汚せるかを競うことにした。なんともシュールな遊びである。第三者に理解されなくても、二人の中では確固たる「楽しい遊び」として成立するのであった。
「さあ、はじめようかぁ~!」
絵里子が掛け声をかけると沙也加と共に泥田の中に足を踏み入れていった。
そして、二人で手で押しあってどちらが先に泥の中に転んでしまうのかをキャーキャー言いながら楽しんだ。二人とも早く泥に包まれたい気持であったが、すぐに泥に身体をあづけてしまっては芸がない。ただ汚れました・・・ではなくて、それまでの過程も楽しいというのが二人の共通認識であった。
沙也加がひときわ強く絵里子の肩を前から押すと、本番開始といわんばかりに仰向けに豪快に倒れた。泥しぶきがあがり、沙也加の薄手の白のロングスカートを泥ハネで汚してしまった。裾は既に汚れていたが、これで洗濯しても染みが落ちないレベルにまで先ほどまで純白で綺麗だった白のスカートが泥だらけになった。
もちろん、絵里子のスカートとトップスはもっと泥だらけである。仰向けで倒れたため、後ろ部分はスカートもトップスも泥だらけである。立ち上がると沙也加をしかえしに突き倒そうと勢いよく押すが返り討ちに合い、再び泥の中に倒れ込む。今度はわざと体をひねらせてうつ伏せに倒れてみた。絵里子だけが泥だらけになって楽しんでいる様子にしびれをきらした沙也加は、絵里子のそばに一緒になって倒れ込み泥の感触を身体で感じた。
絵里子は一気にギアを上げていく。泥をすくいあげると胸に塗り手繰っていく。そしてうつ伏せになったり、寝返りをうちながら清楚な服は泥で覆われていく。もう二度と着れない状態になってしまうが、絶対に汚してはいけないような服を泥だらけにしてしまうという代償を払うからこそ得られる快感が絵里子たちにはある。
・・・・泥の掛け合いや、匍匐前進の競争などを二人で無邪気に遊んでいると、先ほどまで真上にあったはずの太陽が、遠くの山々の頂上に隠れようとしていた。
晩夏なので日が暮れると一気に涼しくなる。二人は急いで帰り支度にとりかかる。着替える前に、まずは服や体にべっとり付いた泥を洗い流さなくてはならない。田んぼ脇の用水路の水を二人で掛け合いながら泥を汚していく。当然、泥染みとなって汚れは完全には落ちないが、目立った泥の塊などをある程度落とした。
二人はお気に入りの服を泥だらけにして二度と着れない状態にしてしまったという代償とひきかえに、今日の出来事に満足していた。さっきまでの泥の感触を思い出しながら陶酔していた。
「また来年だね・・・。」
と絵里子はつぶやく。
「うん、また来年!私達、社会人になってるけど、たまに後輩たちの顔を見にくるついでにここで遊んでも文句言われないよね?(笑)」
「(笑)」
心地良い風が二人の濡れた髪を揺らし、いっきに涼しさを感じ始めた。今日という日は二人にとってけっして忘れることのない大学時代の良き思い出となり醸成されていくこととになる・・・。(完)
(作・ジュテーム家康)
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