私服でちょっとのはずが…ストーリー公開
絵里子は内定を決めたリクルートスーツで着衣水泳を満喫した。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものである。気が付くと夕方になっていた。
絵里子はリクルートスーツから私服に着替え始めた。スカートの裾が地面につきそうなほどの薄手のマキシスカートに新しい白の半袖Tシャツという夏らしい装いである。絵里子は帰宅するために着替えたつもりだったが、プールが目に入ると、最後にちょっとだけ・・・足元だけ浸かって水遊び・・・と自分の心に決めてプールサイドに向かった。
絵里子はスカートの裾をたくし上げて濡れないようにしながらプールの浅い部分に入った。ふくらはぎまで水に浸かった。その冷たい水の感覚が気持ちよかった。そして、ついさっきまでリクルートスーツでプールの中に入って遊んでいた時の気持ちよい感覚を思い出し、一瞬頭が真っ白になった・・・。
気が付くと絵里子はスカートの裾をしっかり持っていた両手を解放していて、プールの水面にボリューム感のあるスカートの裾がフワッと花のように広がっていた。
絵里子の心の奥底から抑えられない気持ちが湧き上がってきた。水面に浮かぶスカートを水の中に沈めた。すると、帰宅するために着替えた私服のままもう一度泳いで遊びたいと思った・・・。
何を思ったのか絵里子はプールサイドに上がった。
「(このままじゃスカートが脚にまとわりついて泳ぎにくいから切っちゃおう!)」
そして、今さっきTシャツのタグを切ったハサミでなんとスカートの裾を膝丈くらいまで短く切り始めた。
帰りのことなどどうでもよかった。自分の素直な気持ちに従いたかっただけだった。
「(ずぶ濡れのリクルートスーツで帰ればいいよね。黒だから濡れてるの目立たないし・・・。)」
そう自分に納得させると、スカートをどんどん切り裂いていき一周ぐるりと丈を短くしていった。即席で膝丈スカートにするとプールの中に入って泳ぎ始めた。スカート丈を短くし太腿の可動域が広くなったこともあり自由にスムーズに泳ぐことができた。帰宅前の着衣水泳はなんとも爽快であった。
泳ぎ終わるとプールサイドでスカートの水を絞った。デザインスカートとも言い難いほどに無造作に切り裂かれた状態では、いくら水気を取ったとしても帰れないと思った。
すると、二度と着る事ができないスカートになってしまったということで、自分でビリッと手で引き裂いて遊んでみた。そして誰に見せるともなくスカートをめくって下着がちらりと見えるようなしぐさをして一人で楽しんだ。
気が付くと先ほどよりも周囲は暗くなり始めていた。そろそろ事務所の社員さんが様子を見に来るかもしれない。今の恰好を見られては恥ずかしいので急いでリクルートスーツに着替えなおした。
ウォッシャブル素材で、さらには、しばらく日光に当たっていた所に置いていたこともあり、意外とスーツは乾いていて、ちょっと湿っている程度であった。このことは絵里子を安心させた。
Tシャツからブラウスに着替えなおすのは時間がかかるので、ずぶ濡れのTシャツの上にジャケットを羽織り、切り裂いたスカートを脱いでタイトスカートへと穿き替えた。
今度こそ本当に帰宅の準備をした、忘れ物のチェックなどをし終わると、今日一日遊んだプールをじっくり目に焼き付けるように名残惜しく眺めた。
「(また遊びに来よう!)」
と心の中でつぶやくと、プールを後にした。(完)
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