就活帰りのハプニング…ストーリー公開
ある夏の日の朝、就職活動に励んでいた絵理子は、親の軽自動車を借りて都内郊外に本社を持つ農業関連企業2社の選考のために出かけた。
ここのところ一次面接で落とされ続けている悪い流れを変えようと、心機一転、昨日のうちにリクルートスーツを新調した。今まで着ていたのは黒の3ボタンスーツだったが、黒の2ボタンスーツへとデザインを変えてみた。しかし、悪い流れは変わるどころか悪化してしまったようだ・・・。
まず、1社目では面接であがってしまい大失敗。2社目では、なんと先方の手違いで選考日が異なっていた。つまり、誤って今日呼ばれてしまったのだ。
今日のために、友達とバンドのコンサートに行くのをキャンセルしていたのに実力を発揮できず憮然としながら帰宅の途につく。ところが、面接先のすぐ近くにある田園地帯を走っているとガス欠で車が止まってしまった。どこまでもついていない・・・。
やむを得ず近くのガソリンスタンドを探しに行き、ここまで来てもらって何とか対処してもらおうと考えた。貴重品や選考書類、履歴書などが入ったリクルートバックを大事に肩にかけ、歩き始めた。
田園地帯を歩いていると道に迷い、畦道を進むと休耕田にぶつかり道が途切れてしまった。周囲を見渡すと、ある方向に民家やマンションが見える。そちらの方に向かえば間違いなくガソリンスタンドがありそうな雰囲気だった。
しかし、そちらの方向に行くには、目の前の休耕田を突っ切らなくてはならない。それが嫌であれば、今来た道を戻って人に正しい道順を聞けば良い。普通なら、後者を選ぶはずだが、暑さと就活のストレスで嫌気がさしていた絵理子はパンプスを履いたまま休耕田に踏み込む決断をする。パンプスやスーツが汚れても洗えばいいわけだし・・・と汚れることに躊躇がない。大学生らしい向こう見ずな判断である。
休耕田に入り、いくらも進まないうちに泥にパンプスが埋まりよろけて尻餅をついてしまった。大事な資料なども入っているリクルートバックに泥はねがとんでしまった。これ以上泥で汚れないように、リクルートバックをいったん、畦道に放り投げて埋まったパンプスを掘り出しにかかる。
芋掘りの要領で泥の中からパンプスを力任せに引き抜くと、バランスを崩して再び休耕田に尻餅をついて座り込んでしまう。真新しいリクルートスーツが台無しだ。スカートはもちろん、ジャケットもお腹の辺りまで泥水に沈んでしまった。
吹っ切れた絵理子は、足をとられて転ぶことがないように膝立の状態で泥の中を進んでいく。否応がなしに泥水でスカートが汚れていく。しかし、絵里子は不思議と汚れていくことに抵抗がなかった。絵里子の頭の中では、ガソリンスタンドに早くたどり着きたいということの方が優先度が高かった。
リクルートスーツを泥だらけにするのを厭わない気持ちの代償として、思いのほか早く休耕田の対岸までたどり着いた。パンプスをはくと、街の方を目指して歩き出そうとした。
・・・すると、頭が真っ白になった。パンプスを泥から引き抜く際に、一時的に放り投げたリクルートバッグを対岸の畦道に置いてきてしまったことに気づく。大事なものが入っているため、置いたままにするわけにはいかない。今来たルートを戻るため、絵理子は再び休耕田に踏み込んだ。
やはり、パンプスは泥の中に埋まってしまう。なんとかパンプスを探し出すと、四つん這いになって進み始めた。スカートもジャケットもブラウスも、泥だらけになってしまうが、この体勢で進むのがここでは最も効率が良かった。
リクルートバックのところへとたどり着くと、さすがに疲れたのか少し座って休むことにした。
この状況になっては、街までガソリンスタンドを探しに行くのが億劫に感じた。泥だらけのスーツ姿を人に見られるのが嫌だからというのではなく、単純に、面倒なことのように思えてきたのだ。そこで、絵里子はリクルートバックからスマホを取り出すと母親に電話し、今までの状況を説明し、今いる場所がどのあたりかもグーグルマップを活用しながら知らせた。
もちろん、スーツが泥だらけであることも知らせたが、なぜか母には誇張して伝えた・・・。
「(もう泥だらけなんだし、お母さんが迎えに来るまで泥んこ遊びしちゃおう・・・。」
三度、休耕田の中に入ると、おもむろに田底から泥をすくいあげ、ジャケットやスカートに塗り手繰っていった。何度も何度も繰り返した。泥の匂いが嗅覚を刺激してくると、絵里子は「デジャブ」の感覚にいざなわれた。
「(なんか懐かしい・・・。初めてじゃない、この感覚・・・。)」
休耕田の中で体育座りのように躊躇なく座り込むとお尻から伝わってくる泥の柔らかい感触に魅せられた。そして、吸い込まれるようにリクルートスーツのまま泥遊びに興じてしまう。
就活のストレスからなのか・・・絵里子を突き動かす根源はわからないが、何かにとりつかれたように泥まみれになっていく。泥まみれになりつつ、絵理子の心は晴れやかであった。
【原案:ロイさん 脚色:OLS管理人】
>ふうた さんへ
お久しぶりです。コメントありがとうございます!
2年連続でなんとか天気がもち(きわどかったですか。笑)
撮影ができました。
昨年とはまた違った泥質ですが、田底には豊富に泥がありましたので
各シーンともモデルさんは最終的には泥だらけになっていってもらいました。
千葉での泥んこフェスの情報は初耳です。
たしかに、こういった場所に就活中の絵里子には迷い込んでもらって
リクルートスーツのまま飛び入り参加してもらいたいものです。(笑)
投稿: OLS管理人 | 2018年8月24日 (金) 13:22
こんばんは!
いや~、次回作も期待できそうですね。
ところで、千葉で大人向け?の泥んこフェスがあったようです。調べてみると、畑の持ち主に交渉して実現したとか。
ありきたりの泥んこバレーなどと比べても、泥質もよさそうでした。
こういう場に絵里子さんに迷いこんで欲しいものです(笑)。
投稿: ふうた | 2018年8月23日 (木) 21:12