二人の女子大生の運命(2)
絵里子の到着から遅れること20分。といっても、会社から知らされた約束の時間よりも10分早いが沙由理が到着した。
沙由理が到着した時間には既に受付が開設されており、制服姿の受付の女性が対応してくれた。沙由理は「青野」ですと名前を告げると試験会場の中へと案内された。
沙由理は前回の面接と筆記試験にパスして今日は「2次選考」であった。しばらく、受付の女性に言われるがまま席についていたが、時間が経つにつれ何かおかしいことに気が付き始めた。
2次選考を受けるのは自分一人だけと聞いていたのに、会場には3、4名のリクルートスーツ姿の女子学生がいる。しかも、会場についたら着替えて待っているようにと指示を受けていったが、そのことについて何の案内もない。
リクルートスーツ姿の沙由理は受付の方に確認のために向かおうと席を立ち上がった瞬間、部屋のドアが開いた。
「青野さん、ちょっとすみませんが、荷物をもってこちらへ来て下さい。」
内心、沙由理はほっとした。しかし、部屋の外に出ると思いもよらないことを知らされる。
「青野さん、いや、青野【沙由理】さんですよね?」
「はい。」
「すみません。貴方以外に、もう一人【青野】さんという女性がいたらしく、その方をあなたと勘違いしたらしく、実習試験が行われる会場に試験官が「もう一人の青野さん」を連れて20分ほど前に行ってしまったとのことなのです。」
「私と間違えて・・・ですか?」
「はい、すみません。携帯などの連絡手段もないため、人違いであることを伝えるには、直接会場にいくしかありません。申し訳ないですが、急いで会場に向かってもらえないでしょうか。」
沙由理は受付の女性から会場までの地図を手渡される。
「もしかして、もう一人の「青野」という女性、下の名前は【絵里子】いう人ですか?」
「そうですがご存知なのですか?」
「はい、同じ学校の人です。名前と顔は一致しますがあまり親しくはありません。あっ、早く行ってあげないといけませんね。では失礼します。」
と、軽く頭を下げると、着替えの入ったバックを肩に掛けて手渡された地図を頼りに早足に会場へと向かい始めた。 ~(3)に続く~
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