二人の女子大生の運命(1)
今、若い世代の人達の間で農業にビジネスチャンスを見いだしたり、農作業の尊さ・やりがい、または、田舎暮らし・自然の中での生活への憧れといった理由から農業への注目が高まりつつある。
動機はどうあれ、農業にたずさわる人間が増えることは、暗い将来の日本の食糧事情に一筋の光が差し込みはじめたとも考えられる。
そんな農業に魅力を感じ、大学卒業後の就職先として農業関連企業を志望し、本日選考試験に臨む女子大生が二人ここにいる。
絵里子と沙由理である。二人は地方にある某女子短期大学農業学科の2年である。クラスは違うため、それほど接触する機会はなく殆ど話すこともない。
だが、二人の苗字は偶然にも同じで「青野」という。苗字が一緒の上に、外見も似ているため二人は姉妹だとよく間違えられるが、実際には姉妹でもなければ親戚でもない。たまたま苗字が同じだけである。
絵里子と沙由理は今、それぞれ自宅からリクルートスーツを着込んで、とある町の農業関連会社「A社」の選考会場へと向かっていた。もちろん、お互い「A社」を受けることは知らない。
二人はそれぞれ選考段階が異なっており、一方は1回目の選考ということで面接と簡単な筆記試験。もう一方は2回目の選考で会社の田んぼを使って行われる実習試験であった。
絵里子はかなりの余裕をもって自宅を出たため約束の時間の30分前に「A社」に到着した。時間が早かったせいか、まだ受付が開かれていないようであった。絵里子はしばらく外で立って待つことにした。
「青野さんですか?ずいぶんと早いですね。」
会社の中から長靴をはきジャージ姿の中年男性が出てきて絵里子に声をかけてきた。
絵里子はジャージ姿に一瞬違和感を持ったが、会社から出てきて自分の名前を呼んだのだから、選考に関係のある人なのだろうと思い応答した。
「おはようございます。はじめまして、青野絵里子と申します。本日は宜しくお願いします!」
「青野さん・・・うちのような中小の会社ですから、この時間の選考は青野さん一人だけでして。時間がもったいないから、青野さんさえよければ、もう始めてしまってもいいんですが、どうします?」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、更衣室がありますから着替えてきて下さい。」
「はい? あの、着替えるといいますと?」
「人事課から連絡いっているはずですけど。スーツのまま選考受けるつもりですか・・・?」
ジャージ姿の試験官は驚いた表情で聞き返した。
「はい。就職活動中はたいていリクルートスーツです。何も考えずいつものようにスーツで着てしまいましたけど・・・。」
「服装に決まりは無いので何でも構いませんが、ちょっとびっくりしたもので・・・。まあ、青野さんさえよければそのままでもいいですよ。では、選考会場へと移動しましょうか?」
「ここではないのですか?」
「そう伝えてあったはずですけど。」
「日時と集合場所はしっかり見ていたのですが、細かい所までは確認しておりませんでした。着替えの事といい、場所のことといい、本当に申し訳ございません。」
「いやいや、そんな恐縮しなくても。気にしないで下さい。」
リクルートスーツ姿の絵里子とジャージ姿の中年男性の二人は、あたりさわりのない会話をしながら実習試験の会場である田んぼのある所へと歩いて向かった。
だが、絵里子は自分が今、田んぼに向かっているということもそこで行われることも知らない。 ~(2)へ続く~
>ココーズ さんへ
ありがとうございます。
しばらくメッシーが続いたので夏はウェットストーリーが
多くなると思います。
ココーズさんにはよりお楽しみいただけると思います。
自分自身も、これから暑くなるにつれて気分はウェットです!(笑)
投稿: OLS管理人 | 2010年6月18日 (金) 23:36
>がっくん さんへ
はい、今回もメッシーです。
しかし次回以降はウェットが続きます。
投稿: OLS管理人 | 2010年6月18日 (金) 23:24
管理人様、新しい作品お疲れ様&ありがとうございます。
このあとある程度展開は予想できますし、それへの個人的な趣向はともかくとして、すばらしいストーリー構成を楽しみにしています。
がっくん様のお気持ちもよくわかります。私もウエット(大好き)>メッシーですから。ですが、作品価値はとても高いと思いますし、またそれを自分でWETに置き換えて考えてみるのも面白いことだと思います。私などは、管理人さんの作品を参考に自分でWET作品を作ったくらいですから。
投稿: ココーズ | 2010年6月14日 (月) 19:48
またメッシーストーリーですか?
たまにはウェットストーリーを読んでみたいです。
ウェット好きなものでして。
投稿: がっくん | 2010年6月12日 (土) 20:46