新入社員の農業研修(3)
絵里子はクリーニング仕立ての濃紺リクルートスーツ姿で、大胆にもぬかるみの上に尻餅をついてしまったのであった。
ジャガイモを掘り出そうと茎を引っ張りながらイモが土の中から抜けた瞬間、勢い余ってしゃがんだ状態のまま後ろに転んでしまったように「みえた」。
しかし、絵里子はわざとそうしたのであった。その事に気が付いている者は誰1人としていなかった。リクルートスーツを汚してしまった女子社員が2人、畑のぬかるみの上に座り込んでいる。
スーツ姿の女性達が畑にいること自体が非日常的であるが、スーツを泥だらけにしてしまった女性がいるという光景は実に異様であった。
呆然とした状態で座り込んでいた怜奈は、絵里子の姿をみて放心状態から覚めたようだ。自分の事よりも絵里子の事のほうを気にし始めた。
「えりちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ・・・。(笑)」
絵里子は笑いながら立ち上がった。今さっきまで一糸乱れぬ状態であったタイトスカートはお尻の部分が真っ茶色に染まってしまっていた。
絵里子は起きあがると、怜奈の手を引き、しゃがんだままの彼女を起き上がらせた。怜奈も絵里子と同じようにタイトスカートのお尻部分から下が汚れていた。そして、2人のスカートの裾からはポタポタと泥が滴り落ちていた。
怜奈と絵里子はリクルートスーツが汚れるのを着にせずに作業を行い始めた。収穫したジャガイモについた泥をスカートの太股辺りの生地になすりつけ、泥を拭き取ってからかごの中に入れた。
着替えを持ってきている故、一端汚れてしまえば吹っ切れるものである。
そんな2人の姿を見ていた他の同僚達も、スーツが汚れないよう注意しながら作業するのが億劫になってきたのか、汚れるのを厭わないようになっており、気が付くとジャケットとブラウスの袖口やスカートの裾辺りが泥で汚し始めていた。
講師からノルマとして課されたジャガイモ畑一区画の収穫作業は、まだ半分も終わっていない。
低い体勢で作業することは20代前半の新入女子社員達には想像以上に大変なことであったらしい。疲れたら休みながら作業しても良いことにはなっていたが、くつろげるソファーやベットがあるわけではない。辺り一面のジャガイモ畑。疲れを癒すには、ぬかるんだ地面の上にお尻をついて座るしかない。
既にスカートを泥だらけにしている怜奈や絵里子が、ぬかるみの上に座って小休止するのが気にならないのはある意味当然かもしれない。ただ、他の女子社員達は袖や裾が汚れているだけであるので、これ以上スーツを汚したくなければ座らず立って休むという選択肢もあった。
しかし、低姿勢で作業し続けることの疲労度は想像に難くない。疲れと緊張から解放されるために、他の女子達もスーツが泥だらけになる事を代償として「癒し」を選択したのであった。
しばらく休憩すると、みんな立ち上がり、残りのジャガイモの収穫に精を出した。疲れが癒され、汚れることを気にせず作業に専念できるようになったためか、あっという間に残りの収穫を終えた。
その頃には彼女らの汚れたスーツは乾き始めていた。皆一様にお尻の中心部はまだ水分を含んだ泥で汚れているが、その周囲は乾いて白っぽく変色し始め、布地が硬くなっていた。
作業を終えた彼女らに講師は「粋なはからい」をした。
「みなさん、泥だらけになりながらの収穫、お疲れさまでした。研修はこれにて全て終了です。明日、会社で制服を支給します。したがって、今日でリクルートスーツは卒業です。着替えも持ってきているわけですし、その汚れてしまったリクルートスーツのまま最後に泥んこ遊びというのはどうですか?なかなかできない体験だと思いますよ!」
と、ジャガイモ畑の脇にある田んぼを指さした。田植え前の代かきを終えたばかりの状態らしかった。
彼女らは皆、少女のような笑みを浮かべた。心の内は既に決まっていた。(完)
ジャガイモを掘り出そうと茎を引っ張りながらイモが土の中から抜けた瞬間、勢い余ってしゃがんだ状態のまま後ろに転んでしまったように「みえた」。
しかし、絵里子はわざとそうしたのであった。その事に気が付いている者は誰1人としていなかった。リクルートスーツを汚してしまった女子社員が2人、畑のぬかるみの上に座り込んでいる。
スーツ姿の女性達が畑にいること自体が非日常的であるが、スーツを泥だらけにしてしまった女性がいるという光景は実に異様であった。
呆然とした状態で座り込んでいた怜奈は、絵里子の姿をみて放心状態から覚めたようだ。自分の事よりも絵里子の事のほうを気にし始めた。
「えりちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ・・・。(笑)」
絵里子は笑いながら立ち上がった。今さっきまで一糸乱れぬ状態であったタイトスカートはお尻の部分が真っ茶色に染まってしまっていた。
絵里子は起きあがると、怜奈の手を引き、しゃがんだままの彼女を起き上がらせた。怜奈も絵里子と同じようにタイトスカートのお尻部分から下が汚れていた。そして、2人のスカートの裾からはポタポタと泥が滴り落ちていた。
怜奈と絵里子はリクルートスーツが汚れるのを着にせずに作業を行い始めた。収穫したジャガイモについた泥をスカートの太股辺りの生地になすりつけ、泥を拭き取ってからかごの中に入れた。
着替えを持ってきている故、一端汚れてしまえば吹っ切れるものである。
そんな2人の姿を見ていた他の同僚達も、スーツが汚れないよう注意しながら作業するのが億劫になってきたのか、汚れるのを厭わないようになっており、気が付くとジャケットとブラウスの袖口やスカートの裾辺りが泥で汚し始めていた。
講師からノルマとして課されたジャガイモ畑一区画の収穫作業は、まだ半分も終わっていない。
低い体勢で作業することは20代前半の新入女子社員達には想像以上に大変なことであったらしい。疲れたら休みながら作業しても良いことにはなっていたが、くつろげるソファーやベットがあるわけではない。辺り一面のジャガイモ畑。疲れを癒すには、ぬかるんだ地面の上にお尻をついて座るしかない。
既にスカートを泥だらけにしている怜奈や絵里子が、ぬかるみの上に座って小休止するのが気にならないのはある意味当然かもしれない。ただ、他の女子社員達は袖や裾が汚れているだけであるので、これ以上スーツを汚したくなければ座らず立って休むという選択肢もあった。
しかし、低姿勢で作業し続けることの疲労度は想像に難くない。疲れと緊張から解放されるために、他の女子達もスーツが泥だらけになる事を代償として「癒し」を選択したのであった。
しばらく休憩すると、みんな立ち上がり、残りのジャガイモの収穫に精を出した。疲れが癒され、汚れることを気にせず作業に専念できるようになったためか、あっという間に残りの収穫を終えた。
その頃には彼女らの汚れたスーツは乾き始めていた。皆一様にお尻の中心部はまだ水分を含んだ泥で汚れているが、その周囲は乾いて白っぽく変色し始め、布地が硬くなっていた。
作業を終えた彼女らに講師は「粋なはからい」をした。
「みなさん、泥だらけになりながらの収穫、お疲れさまでした。研修はこれにて全て終了です。明日、会社で制服を支給します。したがって、今日でリクルートスーツは卒業です。着替えも持ってきているわけですし、その汚れてしまったリクルートスーツのまま最後に泥んこ遊びというのはどうですか?なかなかできない体験だと思いますよ!」
と、ジャガイモ畑の脇にある田んぼを指さした。田植え前の代かきを終えたばかりの状態らしかった。
彼女らは皆、少女のような笑みを浮かべた。心の内は既に決まっていた。(完)
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