◎某農業大学の4年生で就職活動を控えていた絵里子は、自由に遊んでも良いという休耕田をキャンパス近くに偶然見つけた。「日本の耕作放棄地の活性化について」というタイトルで論文を書いている絵里子は、親友の沙也加を誘って休耕田の実態観察に来ていた。沙也加は着替えを持ってきていて田んぼの中に入って泥んこ遊びに興じていたが、着替えを持ってきていない絵里子はその様子をただ見ているだけであった。
絵里子は泥んこ遊びをして白の膝丈フレアースカートをみるみるうちに泥だらけにしていく沙也加の姿を畦道にしゃがんで見ていた。
「嫌だぁ~」
絵里子のはしゃいだような甲高い声があたりに響き渡る。
泥んこ遊びに1人興じていた沙也加は畔から自分を「ただ」眺めている絵里子の姿を見るなり、急に田んぼから畔の方に上がってきてバケツで用水路から水を汲み、自分のスカートの泥汚れを落とすのかと思いきや、なんと絵里子のデニム風のタイトスカートに水を掛け始めたのであった・・・。
最初は控えめであったが徐々にエスカレートしていき、絵里子のスカートはあっという間に濡れ、濡れた箇所が濃い青色に変色していた。着替えを持ってきていない絵里子は頭が真っ白になった。友達の沙也加は泥んこ遊びをする前提だったため、着替えを持ってきていた。
「何するのよ~」
絵里子は嫌がってはいるものの夏の暑い日に水を浴び気持ちいい感覚にも浸っていた。気温も高いので濡れたスカートもすぐに乾く筈であった・・・。
しかし、沙也加は自分が着替えにと持ってきたスカートを絵里子に貸すから、一緒に泥んこ遊びをしようと誘ってきた。その誘いに絵里子はびっくりしたが、沙也加が泥の感触の気持ち良さなど様々なことを語っているのを聞いていると、不思議と自分も泥だらけになってみたいと思ってきた。汚しちゃいけないはずの服を汚しちゃう・・・・それも泥だらけにしてしまう・・・・という子供の時に経験した「懐かしい体験」を今の服装のまますることに罪悪感を感じつつも、何か「特別な体験」ができる充実感、期待感が高まってきたのであった。
「私のスカート貸してあげるから!それで帰ればいいでしょ。私はこの白いスカート、泥染みは落ちないだろうけど、洗ってそのまま帰るから気にしないで!」
沙也加の繰り返される提案に後押しされて、絵里子は一緒に遊ぶことに同意した。スカートも借してもらえるという安心感から、どうせなら大胆に汚してしまおうと思った。
絵里子はフロントがラップ風になっていて膝が隠れるミディ丈のタイトスカートを穿いている。夏らしく爽やかなブルーを基調としていて見た目のデザインはスカート丈が長いため上品な印象だ。
ずぶ濡れにされたスカートの数分後の運命を想像しつつ、絵里子は沙也加に誘われるままに畔から水田の方へと足を踏み入れた。
「沙也加、本当にスカート貸してくれるんだよね?」
「大丈夫だから。ちゃんと、か・し・て・あ・げ・る!」
「わかった・・・」
絵里子はようやく吹っ切れたのか、本来汚してはいけないお気に入りのスカートを田んぼの中に沈めていった。お尻をつけて座ると泥はかなりの深さがあり、ゆっくりと下半身が田んぼの中に埋もれていく。泥の表面や、田に張られた水は暖かかったが、沈みこんでいく泥の奥底は少し冷たくひんやりし、柔らかくヌルヌルした感触が気持ちよかった。
泥を手ですくってスカートに塗りたくっていく。きめの細かい泥で砂利や草など大きな不純物が無くさらっとした泥であった。その手触りも気持ちよく、癒されていく感じがした。
泥の中で遊んでいると、絵里子の何かのネジが外れた。突然、立ちあがった。
「これじゃ動きずらいよ~!」
泥だらけのスカートのフロントにあるスリット風の部分を手で引き裂いて破いてしまう。泥で汚れたふくらはぎから太腿あたりまで露わになった。足が自由になった絵里子はさらに大胆に泥んこ遊びをした。
「(小学校?・・・幼稚園の時以来かな?・・・)」
幼い時に友達と泥んこ遊びをし、泥だらけの洋服のまま家に帰って母親に叱られた時のことを思い出した。今は一人暮らしで誰かに叱られることはないが、帰りの事を考えるとちょっと心配になってきた。
気が付くと、沙也加はとっくに畔に上がって用水路の水で体を洗い流している。
「どうしたの?もう帰る?」
「・・・まだ・・・だけど。一旦小休止・・・。それより、絵里子さ、もう着替える?」
「そうだね。泥んこ遊びはもう十分。一瞬、子供の時に戻った感じだった。それに泥の感触って思ったより気持ちいいんだね。また泥んこ遊びしたい感じ!(笑)」
「はい、スカート。」
「・・・ありがとう!すごいボリューム感!」
「絵里子なら私と身長同じくらいだからスカートが地面につくことないと思うけど・・。」
「これ、マキシなんだね。こんなドレスのように長いスカート穿くの久しぶり!これ貸してくれるの?」
「うん。」
「もう着替えてくる。」
絵里子は泥だらけの自分のスカートをある程度洗って綺麗にすると、沙也加から借りたスカートに履き替えた。
「ごめんねスカート借りちゃって。トップスがちょっと汚れてるけどスカートに付かないかな。もちろんこのスカート、洗って返すから・・・。」
「うん・・・」
沙也加は急に絵里子に近づいてきた。
「えっ、何?・・借りたスカートなのに!」
なんと、絵里子は沙也加に田んぼの中に突き落とされてしまったのであった。
「沙也加!・・・なんでよ~!」
「ちゃんと、か・し・て・あ・げ・る・・・って言ったでしょ。(笑)」
「でも、これじゃ泥だらけで・・・。」
「私と一緒に帰るんだから道連れ!(笑)」
「ひどい~もう・・・!沙也加、始めからこういう魂胆だったの?」
「いや、別にそうじゃないけど、今さっき、絵里子さ、【また泥んこ遊びしたい】って言ってたでしょ、だったら私のスカートに履きなおしたらまた泥だらけにしちゃいたいなって思って・・・」
「【また】って今日って意味じゃないから。(笑)また今度、別の日に泥んこ遊びしたいって思っただけ。」
「結局したいんでしょ?だったら今でもいいじゃない。私のスカートなんだから【遠慮なく泥だらけにしていいわよ。】(笑)」
絵里子は、まさか着替えた服のままで田んぼに突き落とされるとは思っていなかった。これで、二人とも泥だらけになったスカートを洗って泥染みがついたままずぶ濡れのスカートで帰らなくてはならない。
二人はお互い近くの下宿先に住んでいて、この田んぼからも歩いて20分程度のところだった。ただ、それなりに人通りがあるので、誰かに見られる可能性はあった。そのことを考えると絵里子は恥ずかしい気分になったが、一人ではなく沙也加と途中まで一緒なのが救いだった。
こうなったら、後先考えずにおもいっきり泥んこ遊びをしようと絵里子は思った。
沙也加が畔から見守る中、絵里子は借りたスカートを隈なく泥だらけにしてしまおうと思った。泥の中ではってみたり、寝返りをうってみたり、立ち上がって手で泥をぬりたくって泥だらけにしていく。
「沙也加、見て! 遠・慮・無・く・・・泥だらけにするからね!」
「もう、好きにして!」
という沙也加は、思いの外、派手に泥だらけになっている絵里子の姿を見て、そのスカートでは二度と外出できないくらい泥染みになってしまうことを恐れたが後の祭りだった。
絵里子は、さっきはブラウスをあまり汚さないようにと気を浸かっていたが、今となってはブラウスが汚れることも気にせず、沙也加から借りたスカートを前も後ろもどこもかしこも泥だらけにしていく。
クリーミーな泥の気持ち良さを感じながら、沙也加が自分を突き落としたことを後悔させようと彼女のスカートを茶色く染めていくことに没頭した。沙也加はその様子を見ているしかなかった。自分のスカートが絵里子によって泥だらけにされていくことに何とも言えない不思議な感覚を覚えた。
ようやく絵里子は色々な意味で【満足】し畔に上がってきた。
「沙也加ありがとう!おかげで泥んこ遊び楽しめた!」
「(・・・・・)」
「じゃあ、洗い流してできるだけ綺麗にしてから帰るから。このスカート、綿素材だろうから泥染みは落ちないと思うけど・・・。」
「うん、気にしないで!絵里子が楽しんだならそれでいいわ。そのスカート、泥んこ遊び専用服にしようかな。(笑)」
沙也加は先ほどまでの屈託のない笑顔が消え苦笑いである。
いつのまにか辺りは薄暗くなっていた。ここに来たときは心地良く感じていた風が肌寒く感じる。
二人は念入りに泥汚れを落としずぶ濡れのまま田んぼを後にした。しばらくして、絵里子は、この田んぼに因縁を感じ振り返った。何らかの形でまたここに来ることを予感した。賽は投げられたのであった・・・。
(作・ジュテーム家康)
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