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2010年10月12日 (火)

晩夏の思い出(1)

 

 夏が終わりを告げ衣替えをむかえようとしている頃、今だ就職先が決まらず奮闘する大学4年生の絵里子は、リクルートスーツに身を包んで一人浜辺に立っている。「あの時」の約束を果たすために・・・。
 絵里子の立っているずっと向こうには、小さな屋根が見える。「二人」でよく海を見ながら語り合った、懐かしい屋根つきのベンチだ。


 ~4年前、同浜辺で~

 白の半袖セーラー服とやや丈が短い濃紺プリーツスカートというオーソドックスな制服姿が絵里子にはよく似合っていた。
 スニーカーと白い靴下を脱ぐと、彼氏のヒロシに手をひかれながら波打ち際へゆっくりと歩み寄る。潮風が強く、セーラー服の紺色のスカーフと自慢の黒髪が風になびいている。
 絵里子はヒロシと触れていない方の手を頭にやり、髪が乱れるのを抑えようと気を取られていると、いつの間にか足は海水に浸たっていた。


 ・・・・・・・・絵里子とヒロシは大学受験を控えた高校3年生であった。学校は別々だった。共通点は部活動。絵里子は男子サッカー部のマネージャーで、ヒロシはライバル校のエースストライカーだった。
 交流試合を積み重ねるにつれ、お互い意識し合い、気が付けばいつしか付き合っていた。

 3年生最後の夏の大会が終わり、秋にさしかかろうとする頃、受験モードへと切り替わったはずであるが、受験勉強だけには集中できないでいた。
 その落ち着かなさを解消する為に二人はデートをしていた。恋が「主」で受験勉強が「従」に成り下がっていた。しかし、恋愛関係にある10代後半の男女にとっては、むしろ、自然な感情的・心的状態とも言えた。・・・・・・・・


 ヒロシはズボンの裾を上げることもなく制服が濡れるのを厭わずに絵里子の手を引っ張っていく。水のかさが一気に絵里子のひざ丈まできてしまった。
 「キャー! 冷たい~」
 絵里子は、海水が気持ちよく感じて、はしゃぎながらも、短めのスカートの裾がもう少しで水面につきそうになった。ヒロシから手を離し、スカートが濡れないように少したくし上げた。
 「絵里子。濡れてもすぐに乾くよ。気にするなって。」
 「だって私、濡れるの嫌いなんだもん。」
 「そうかよ。じゃあ、こうするしかないかな。(笑)」
 ヒロシは絵里子を両手で抱き上げた。
 「ちょっと、何すんのよ!」

 ヒロシは、さらに深みへと入って行った。ヒロシの太ももあたりまで水位がきている。絵里子は抱き上げられているため濡れずにいるが、もしここで足をつけて立ったとすると下半身は確実に水没してしまうだろう。

 「ちょっと、放してよ。」
 「えっ、濡れてもいいの?(笑)」
 「ちがうってば!岸に戻ってということ。」
 「だって今、放してといったろ。(笑)」 
 「ヒロシってば・・・ふざけないでよ。」
 「・・・。」
 「あっ・・・。」

 数秒の間の後、ヒロシは抱き上げている絵里子の唇をふさいだ。絵里子は目を閉じながら静かにそれに応じた。ヒロシはそっと手を放し、ゆっくりと絵里子の下半身を海水の中に入れていった。
 絵里子は胸のあたりまで海水に浸かっていた。海面にはプリーツスカートがひらひらと漂っていた。そして、徐々に水分を含み黒く変色していった。

 高波に襲われ、絵里子は頭から海水をかぶり、上半身もびしょ濡れとなった。夏服のセーラー服は生地が薄いせいもあり、可愛らしいピンクの花柄の下着がくっきりと透けてしまっていた。
 そのことに気づくはずもない二人は、いつまでも波に制服を洗われながら抱き合っていた。

 
 どのくらい時間が経ったのであろうか。現実空間と時間を超越した世界の中にいた。
 制服から水を滴らせながら岸に上がると、二人は靴とカバンを手に持ち、屋根つきのベンチの方に向かって行った。
 そこは、二人だけの指定席と言える場所だった・・・。 ~(2)へ続く~

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晩夏の思い出(1)を参照しているブログ:

コメント

>よしまさ さんへ
先輩、書き込みありがとうございます。
このストーリーであるかどうかは言いませんが、
実体験が少し入っているもの、第三者の経験を脚色したもの、
すべてフィクションのもの・・・と私が書くストーリーの
モチーフは色々です。
先輩ならこれが上記のいずれに当てはまるかご存知のはずですね。(笑)

久しぶり。今回もウェット話し。
これって少しリアル入っとる?

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