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2010年8月29日 (日)

真夏のリクルートスーツ(2)完結編


 オリエンテーションの帰りの途にある絵里子は、朝とは異なる道順で駅まで向かっていた。
 来春の入社後、毎日出勤で来ることになるわけだが、今はまだこの街のことを何も知らない。今日は時間もたっぷりあるので、帰りはバスを使わず、あえて知らない道をゆっくり歩きながら街のことを少しでも知ろうと考えたのであった。
 しかし、歩いてしばらくするとそのことを後悔し始めた。よりによってこんな暑い日に・・・・自分が汗かきで暑さが苦手であることを身を以て改めて感じたからだ。
 
 瞬く間にジャケットの下に来ているブラウスは汗でびしょ濡れになった。タイトスカートも汗で裏地が脚にまとわりつき絵里子は不快な気分で歩いていた。
 早くこの暑さから解放されたいと思いながら駅の方を見たが、駅ビルやデパートの建物はけっこう先であった。涼める場所にたどり着くまでまだ時間がかかりそうである。

 しめぼったくなったハンドタオルで汗を拭きながら歩き続けた。2、3分歩いただろうか。突然、緑の木々に囲まれた公園があらわれた。
 「(こんな所に公園があったんだ!)」

 絵里子はちょっと立ち寄ってみることにした。
 公園の入り口にはいくつかベンチがあり、その上を覆っている大木のおかげで日陰となっていて涼しそうであった。お年寄りが小学生くらいの自分の孫らしき子供たちとくつろいでいてのどかな光景が眼前に広がっていた。

 耳を澄ますと、向こうの方から子供たちの騒ぐ声が聞こえてきた。絵里子は気になって声のする方に行ってみた。すると、そこでは、子供たちがジャブジャブ池の中でお互い水を掛け合って水遊びをしていた。猛暑の中、水を浴びて気持ちよさそうであった。
 絵里子は、自分も池の中に入って子供たちと水遊びして水を頭からかぶりたい気分であった。しかし、自分がリクルートスーツ姿であることをすぐさま思い出した。池の中の水は意外に綺麗であった。手を伸ばし指先だけ池の中に入れてみると、水はかなり冷たかった。
 どうやらここの公園の池は循環式の水ではなく、水道水か川の水が流れ込んできているようであった。絵里子はすぐにそう察知した。

 絵里子は公園を出て、何かを期待しながら・・・水が流れてくる方へと歩いて行った。すると、意外に近くに小川があることに気が付いた。
 そして、絵里子は小川の水際へと歩み寄り、しゃがみ込むと水の中に手を入れた。今さっき公園内の池で指先で受けたのと同じような感覚であった。

 「気持ちいいですよね?」
 「(・・・?)」
 聞き覚えのある声に絵里子が後ろを振り返ると、先ほどまでオリエンテーションで一緒で携帯番号とメールアドレスを交換したばかりの幸代が立っていた。絵里子がびっくりして言葉を失っていると、彼女の方から話しかけてきた。

 「青野さん、どうしてここに?」
 「いや、あの・・・、暑いから駅の方のデパートにでも入って涼もうと思って・・・」
 「駅は反対方向・・・。」
 「はい。それは分かっているんですけど。駅の方に向かっている途中、あそこの公園が目に入って、ちょっと休もうとしたら子供たちが遊んでいる池を見つけちゃって。それで・・・」
 「近くに川があると思って探してみたら、ここにたどり着いたとか?(笑)」
 「あっ!もしかして私の後をつけて・・・?」
 「(笑)ちがいますよ。私は青野さんよりも先にここにいたのよ。それでね、暑いから一人で水遊びしちゃったんです。」 
 「水遊びって・・・あっ!」
 幸代の黒のリクルートスーツは水で濡れているように見えた。
 「もしかして、リクルートスーツのまま?」
 「うん。10月の内定式まではスーツ着ることないし。今日はこの暑さで汗びっしょりでしょ、どうせ、このスーツ、明日にでもクリーニングに出すわけだしね。それより、青野さん、一緒に水遊びしない?水が冷たくて気持ちいいよ!濡れてもすぐに乾くし大丈夫だよ。」
 「いや、私は・・・」

 一見否定しているようであるが、絵里子の内心は逆であった。
 びしょ濡れとなった幸代のリクルートスーツを見て、自分も水遊びをしたい・・・それも本来濡らしてはいけないような今の服装のまま・・・という気持ちが心の奥底から突き上げてくるのを感じていた。
 幸代は絵里子の言動と表情から、自分のフェチ趣向と同じにおいを感じ取った。
 
 幸代は絵里子の手を引いて、小川の中へと誘った。
 絵里子は何の抵抗もしなかった。いや、むしろ、幸代に促されるのを待っていたかのようであった。水際でパンプスを脱ぐと、躊躇なく小川の中へと入っていった。
 川の中に全身浸かりたい気持であったが、今日初めて会った幸代の前であまり派手にはしゃぐことはできないと思った。しかし、わざとらしく足を滑らせて転び川底にお尻をつけて座った。そして、困ったような顔をしてみせた。幸代にはすべてがわかっていた。

 「私がここに来た理由は、たぶん、青野さんと一緒よ。」
 「えっ・・・?」
 「青野さんの秘密、私知ってるのよ。あっ、心配しないで。二人だけの秘密だから。」
 
 幸代はしゃがみこんでいる絵里子を優しく後ろに倒し仰向けにした。そして、幸代も絵里子の傍らに仰向けになって寝転がった。二人とも背中とお尻、頭を浅い川底につけて何も話さず、ただ上を見上げている。
 ジャケットとブラウスは瞬く間に水を吸収し、さらには首筋の襟元から冷たい水が入り込んできていたが、二人にとっては冷たいというよりも気持ち良く感じた。

 しばらくすると二人は、手足を水面に打ち付け、ばしゃばしゃと水しぶきを豪快に上げた。その水しぶきが仰向けの二人のリクルートスーツの前面を徐々に濡らしていった。
 そして、二人は起き上がると水を手で掬って掛け合った。頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになりながら、まるで子供のようにはしゃいでいる。

 「(デジャブ・・・?)」
 何ともいえないこの快感・・・。二人は今の自分たちの行為にどこか懐かしさを感じた。
 そして、こんなことがまた繰り広げられるであろうことも・・・言葉には出さずとも確信し合うのであった。(完)

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真夏のリクルートスーツ(2)完結編を参照しているブログ:

コメント

>ココーズ さんへ
お久しぶりです。
次回はリクルートスーツ着用バージョンですでに書き上げてあるので
それを順次公開していきます。
OLバージョンは時間を見つけて書いてみたいと考えておりますが
公開はちょっと先になりそうです。

久々のWETストーリーでしたね。とてもすばらしいお話ですね。今年は特に猛暑で、今も続いていますので、彼女たちもさぞかし気持ちよかったことでしょう。
OLですか?私も楽しみにしています。

>カナ さんへ
OL制服バージョンですか!
私の場合、リクルートスーツバージョンばかりですから、たまにはいいかもしれませんね。
ちょっと先になると思いますが、OL制服バージョンでいってみます!(笑)

>がっくん さんへ
コメントありがとうございます。
しばらく、ウェットストーリーが続くと思います。(笑)

次回はOL制服バージョンは如何でしょうか(^O^)
リクスーとはまた違ったシチュエーションが色々考えられて夢の妄想が広がります。

管理人さまお久しぶりです。
ウェットストーリー拝読しました。夏らしく涼しげな話しでしたね。
しばらく暑い日が続くようですし、次もウェットストーリーを期待します。

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