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2010年5月 6日 (木)

ライバルとの戦い(最終回)


 周りの部員達は驚きのまなざしで、リクルートスーツ姿の絵里子を眺めている。
 絵里子は何かに取り憑かれたかのようにぬかるんだグラウンドの中で何度もボールに向かってとびこんで、スーツをさらに泥だらけにしていく。
 最初にノックを受けてから20分程まったく休むことなく間髪入れずにボールが絵里子に送り出されていた。ノックする人間はその間に2,3回代わったほどハードであったにも関わらず、絵里子は一人でボールを追いかけつづけた。

 ジャケットのインナーの白ブラウスにもべっとりと泥がこびりつきはじめた頃、さすがの絵里子もスタミナが切れ始め、次第にボールを追いかける足が言うことをきかなくなってきた。ついには、足がもつれて倒れ込んでしまった。そして、そのままぬかるんだグラウンドの上に躊躇することなく仰向けに寝転がって肩で息をした。

 「先輩・・・」
 と、ライバルの奈緒美が真っ先に駆け寄ってきた。絵里子に手をさしのべ上体を起こさせると、弾きとんでいたジャケットのボタンを拾って手渡した。
 「絵里子先輩・・・私、やっぱり先輩にはかないませんよ。」
 「ユニフォームを着ていればもっと長く動けたかもよ。」
 「スーツ、すごいことになってしまいましたね・・・」
 奈緒美にそう言われて、改めて自分の泥だらけのスーツを見下ろした。

 「あーあ、ほんと凄い格好だよね。(笑)シャワー浴びて汚れを落とさないとね。」
 「でも、帰りどうするんですか? あの、良かったら服、お貸ししましょうか?」
 「服って、奈緒美、自分の以外に予備でもあるの?」
 「実は、先週、試験監督のアルバイトをしたときに着たスーツが部室にそのまま置きっぱなしにしてあるんですよ。」
 「あのスーツ、奈緒美のだったんだ?」
 「はい、もう当分は着る機会はないと思うので、しばらくお貸ししますよ。」
 「せっかく借りても、下着が濡れたままだとちょっと濡れちゃうね。」
 「先輩さえよければ、別に問題ないですよ。」
 「そう。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。ありがとう!」
 「はい、そうしてください。」
 「さすがに汚れ落としても濡れたままのスーツで街歩くのは恥ずかしいしね。(笑)今度、クリーニングして返すからね。」
 
 守備練習が終わったこともあり、絵里子達は部室にもどった。
 絵里子は泥だらけのリクルートスーツのまま真っ先にシャワー室に入っていった。そしてレバーをめいっぱいにすると、勢いよく温水がスーツにかかり「ゴー」という轟音が狭いシャワールーム全体を包み込んだ。

 スーツのジャケットやスカートにこびりついた泥を落とすのはたやすかった。しかし、今朝おろしたばかりの白の開襟ブラウスについた泥は茶色っぽく染みになって落ちなかった。
 見かけ上は汚れの落ちたジャケットとスカート、染みになったままのブラウスの水を可能な限り絞り終え、ひとまとめにした。
 さすがに、このままではクリーニング屋には持っていけないので、あとで外の物干しにつるして明日まで自然乾燥させておこうと考えた。

 一応綺麗になった下着は、当然濡れたままだった。しかし、今日はこれで帰らざるをえない。
 濡れた体をタオルで丹念にふき終えると、絵里子は奈緒美を呼んだ。
 「奈緒美、スーツ
お願い。」
 奈緒美は部室内に置いてあったスーツをシャワー室まで持っていきスーツカバーをはずすと絵里子に手渡した。
 まだ、数回しか着たことがないのであろう。まるで新品であるかのように綺麗な濃紺のオーソドックスなスーツであった。
 「ありがとう、奈緒美!借りるね。」
 「はい、どうぞお使い下さい。」
 「でも、人のスーツ借りるの初めてだし、こんなに綺麗だと、なんか緊張しちゃうね。」
 「先輩、そんなに気にしないで下さいよ。もし汚れちゃってもクリーニングすれば大丈夫ですし。・・・あっ、私、いそがないと・・・さっきのメンバーと走塁練習することになってるんです。またグラウンドに戻ります!」
 「えっ!そうなの?」
 「先輩、今日はお疲れさまでした。それでは、お気をつけて!」
 と頭を軽く下げると奈緒美はグラウンドへと向かっていってしまった。

 帰り支度をし、部室を出ようとした絵里子は、ふとある事を思いだした。
 「(あっ! 私・・・今日、走塁練習してない・・・)」
 さすがに今日の状況では無しにしてもよかった。当然の判断であり誰にも文句言われることないだろう。
 しかし、彼女の律儀で神経質な性格と、中学時代から中途半端な気持でソフトボールに取り組んでこなかったという並々ならぬプライドがこういう時に邪魔をする。
 さらには、ライバルの奈緒美が走塁練習をするという事を、今、目の前で聞いたいじょう、絵里子は、そのまま帰ってしまう事が気分的にはできなかった。

 今の自分の姿を一瞥した。
 「(守備じゃないからね。走塁のタイミングをはかってちょっと走るだけだから大丈夫だよね・・・。)」

 ふと気が付くと、奈緒美から借りた濃紺スーツ姿であるにもかかわらず、絵里子は再びパンプスからスパイクへと履き替えていた。 (完)

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コメント

>ココーズ さんへ
「美しき友情」、ついに完成したのですね。
また近々拝見させていただきます!

今週末に次のストーリーの第1話を公開しますよ。
絵里子ともう一人同じ女子大生を登場させます。
実はストーリーは全編完成していますが、他の記事と
公開のタイミングを見計らって何回かに分けて公開します。

おかげさまで、「美しき友情」完成しました。これは私に、ヒントを下さった管理人さんのおかげでもあります。ありがとうございました。ちなみに、「すぐジャケットを脱ぐ」のが私の特徴かもしれません。
これから私もまたいろいろな作品を書いていきたいと思いますし、管理人さんのいろいろすばらしいストーリーも拝見するのを楽しみにしています。

>ココーズ さんへ
はい、続きを楽しみにしております!

管理人さん、読んでいただきありがとうございます。
この作品はまだまだ続きます。このあともよろしくお願いします。

>ココーズ さんへ
テニスコートが舞台の「美しき友情」⑦まで拝見いたしましたよ!
イメージが頭に浮かび、頭の中で映像化しながら読めました。
素敵な小説です!続きも楽しみにしています。

ありがとうございます。さて、ネット小説「美しき友情」はすでに書き始めた状態であり、表に出ています。またどうぞ、よろしくお願いします。

>ココーズ さんへ
「美しき友情」ですね。イメージが膨らむタイトルですね。
作品が発表されるのを楽しみにお待ちしております!

こちらこそ、ありがとうございます。
ちなみに、「美しき友情」というタイトルで、あるところで書き始めます。「ココーズ」とあわせて検索されればすぐにお分かりかも、と思います。
今後もいろいろな作品を楽しみにしています。

>ココーズ さんへ
いつもありがとうございます!
余韻を残して終わりにしたので、この後の展開・結末は
読んでいただく皆さん各々によって異なると思います。(笑)

このストーリーを参考にして何か思い浮かんだとのことですが
ココーズさんですから、ウェットストーリーでシャワーシーン
か雨に打たれるシーンが採り入れられるのでしょうか?

ぜひ完成の暁には拝見させていただきたいです。

いやあ、素晴らしいストリー構成でしたね。自分からすれば、趣向のストライクゾーンでないにもかかわらず、読み惚れてしまいました。ありがとうございます。この後どうなるかをにおわせて終わらせるのもお見事です。奈緒美が絵里子の姿に打たれて、将来自分もスーツのままで・・なんてことも考え付いたりもしました。で、正直この作品を「参考にして」私もあるストーリーが浮かびました。「私なりに私の考えで」物語を作りたいと思いますので、たとえどこかで見つけられることがあっても中国の歌のように「盗作だ」と言わないでいただければ幸いに存じます。

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